女中
全て
名詞
17,248 の用例
(0.02 秒)
-
半七はそれを受け取って、自分のうしろの障子を音のしないようにするりとあけた。
入口は二畳で、その傍に三畳ぐらいの女中部屋が続いているらしかった。
半七はその二畳に這い上がって、つき当りの襖をあけると、そこには造作の小綺麗な横六畳があって、縁側にむかった障子ばかりが骨も紙もひどく傷んでいるのが、薄暗いなかにも眼についた。
…
岡本綺堂『半七捕物帳』より引用
-
それは実際、ただ下の暗くて狭い女中部屋から生まれた夢にすぎないよ。
それはあの女中部屋でならぴったりだろうけれど、ここのひろびろとした酒場じゃ奇妙に見えるね。
…
原田義人『城』より引用
-
ほんとうのところ、女中たちはあのかたたちのことを全然知らないし、ほとんど彼らを見たことさえない。
ともかく、女中たちは部屋のなかで不安のあまり死にそうになっている。
そして、部屋の外がとうとう静かになると、彼女らは壁によりかかって、もうふたたびベッドの上へ上がる気力もなくなっている。
…
原田義人『城』より引用
-
あの子のためなら、何でも買ってやってくれ、といわれていたのですからね。
あの子は馬車も持っているし、小馬も持っているし、女中もつけてある。
この前の送金があってからこっちは、私がみんなその費用を立てかえているのですよ。
…
バーネット・フランシス・ホジソン・エリザ『小公女』より引用
-
考えてみると、保土ヶ谷の宿で給仕に出た女中が、頻りに手指を掻いていたのを思い出した。
あの女中から伝染されたのだと思ったが、どうすることもできなかった。
彼は、大事を決行する前に、たとい些細な病にしろ、こうした病に罹ったのを悔んだ。
…
菊池寛『船医の立場』より引用
-
ふだんならば格別、あらしの被害で大手入れの最中、ふたりの病人が枕をならべて寝ていては困るので、ひとまず町の病院へ入れることにしましたが、姉妹ともに素直に送られて行きました。
番頭や女中たちの話によると、半分眠っているようであったといいます。
…
岡本綺堂『怪獣』より引用
-
但し今もくれるかどうかは知らない。
私はこの牛が好きで、時々女中や姉からこれをもらったことを覚えている。
カフェータイガーの名は新しいが、その艶色は天下に轟いている。
…
岸田劉生『新古細句銀座通』より引用
-
子供達が貴女を女中のように、使い廻すようになったらおしまいですからね。
子供に本を読んでやるなどということは、女中のすることですからね。
…
菊池寛『貞操問答』より引用
-
考えてみて、なかった。
まさか、女中の赤い手を見たのが原因だったとは、気づく筈もなかった。
原因がないとすれば、多鶴子にとって全くこれ以上に自尊心を傷つけられることはなかったわけである。
…
織田作之助『青春の逆説』より引用
-
それは彼が十八の時、或年上の宿屋の女中と接吻したと云ふことだつた。
彼は何もこの情事だけは話すまいと思つた訣ではなかつた。
…
芥川竜之介『貝殻』より引用
-
彼女の様な働き者の主婦の下ではかえって居辛いのだ。
女中は暇をとる時、こゝの奥さんは何が楽しみで生きているのかと泣いた。
伝三郎が極道者で彼女は十五年間泣かされて来た。
…
織田作之助『俗臭』より引用
-
女 それごらんなさい。
女中の話ぢやわからないなんて、自分で勝手にきめてるからをかしいわ。
すばらしいお宮があつて、そのお宮に世界中の豚を集めてあるんだなんて出鱈目なのね。
…
岸田国士『富士はおまけ(ラヂオ・ドラマ)』より引用
-
その翌日、支店長の命令で、佐山君とほかに一人の店員が大尉の家へ顔を出すと、家じゅうは殆んどもう綺麗に片付いていた。
大尉は細君と女中との三人暮らしで、別に大した荷物もないらしかった。
…
岡本綺堂『火薬庫』より引用
-
女中は別に何事もなかったと答えると、かれは不思議そうな顔をして帰った。
それが母の耳にはいったので、あくる日その御用聞きの来た時にだんだん詮議すると、わたしの旧宅はここらで名代の化物屋敷であることが判った。
…
岡本綺堂『父の怪談』より引用
-
女中が七時頃はいると、不幸な男が部屋の中央にぶら下がっていたと。
いつもは重いランプを下げている金具にひもを結びつけて。
…
三上於菟吉『患者兼同居人』より引用
-
御新造さんというのは二十八九か三十ぐらいの粋な人で、以前は日本橋とかで芸妓をしていたとかいう噂でした。
この人が女あるじで、ほかにお元お仲という二人の女中がおりました。
お元はもう五十以上のばあやで、お仲はまだ十八九の若い女でしたが、御新造さんがコレラになりたいと言っていることは、そのお仲という女中がお富に話したのだそうでございます。
…
岡本綺堂『青蛙堂鬼談』より引用
-
僕は母と女中と二人に、荒縄でぐるぐるからだを巻きつけられて、さんざんに打たれたことを覚えている。
母の留守に女中の言うことを聞かなかったというのがそのもとだったようだ。
母は大勢の子供をほったらかして、半日も一日も、近所のやはり軍人仲間の島さんのところへ行ってよく遊んでいた。
…
大杉栄『自叙伝』より引用
-
とね それ御覧なさい。
州太 だからと云つて、今更、お前を女中扱ひにも出来まいぢやないか。
とね うれしいわ。
…
岸田国士『浅間山』より引用
-
渡良瀬山峡の村々には完全に段々畑すら見ることができないので、この土地の人々は昔は何をたべていたろうと不思議に思った村々であった。
このあたりの女中が一番長くいつくというのはさもあろうと私も思った。
電話のかけ方も知らないし、ガスのつけ方も知らない。
…
坂口安吾『桐生通信』より引用
-
そして、そうなるとペーピーはあとで、力をにぎるようになったら、いろいろ利益を授けてくれることができるはずだったからだ。
女中の一人がずっと前から高い服生地を使わないでしまっておいた。
それはその子の宝物だった。
…
原田義人『城』より引用