大きな肱掛椅子
17 の例文
(0.00 秒)
-
いましめを解いてもらったのは、彼女がこれから住む部屋へ案内させる前に、ここに滞在するうちに、この城館の中で、そして彼女がこの城館を出てからのちの日常生活中にも守らねばならない規則の細かい点まで注意を受けるためだった。男たちは彼女を暖炉のそばの大きな肱掛椅子に坐らせて、呼鈴を押した。最初に彼女を迎えた二人の娘が滞在中にOが着るものと、Oがここへ着いたときにすでにこの城館の客となっていた男たちと、彼女がここを出ていってから客になる男たちとのあいだで、彼女がよく見分けられるような目じるしを持ってきた。
...
-
この物語は、カンポバッソ公爵夫人がこの運命の知らせを受け取った日の夕暮れに始まる。金色に染められた大きな肱掛椅子の中で、彼女は身動きもしなかった。黒い大理石の小テーブルの上の彼女の脇に置かれた、かの有名なベンベヌート・チェリーニの傑作、脚の長い二つの銀製の大きなランプが輝いていた。
...
-
隠れ場所にいるような気持が感ぜられた。クリストフは窓のそばに大きな肱掛椅子にすわって、膝の上に書物をひらいていた。插絵の上に身をかがめて、うっとりと見とれていた。
...
-
以前は寝室だったのを、気持ちのいい居間に変えたものだった。クラーク夫人は、窓の近くの、大きな肱掛椅子にかけていた。かの女は、痛々しいほど痩せこけていて、その蒼白い顔は、ひどい病苦に悩んでいる人に特有の、憔悴した色を浮かべていた。
...
-
彼女は廊下の箱のところへ行って、籠いっぱいに薪をつめ、客間の暖炉のそばに持っていって火をつけた。こうして、大きな肱掛椅子に坐って背を丸め、すぐそばにお茶のお盆を置いて、彼女は彼の戻るのを待っていた。ただ今度は、恋人が命令したとおりに、すっ裸のまま彼の帰りを待っていたのである。
...
-
-
やがて彼女はゆっくりと顔をあげたが、そこには相手を脅迫し、挑みかかるような恐ろしい表情がもどっていた。彼女は入口に走りよって耳をすまし、窓から外をうかがい、また元の大きな肱掛椅子にもどってそれに身をうずめると、じっと考えこんだ。
...
-
机に凭つて何か書いて居た婦人が立つて挨拶をし乍ら幾つかの椅子を配置した。翁は晶子を強ひて第一の椅子に着かせ、自身は書棚を背にして其次の大きな肱掛椅子に着かれた。僕と曙村とが最後の二つの椅子に掛けたので、翁と僕との間の空いた椅子へ翁は其婦人を坐らせた。
...
-
アンショーもそこにいましたがすぐ部屋から出て行きました。リントンは大きな肱掛椅子にすわってうとうとしていました。
...
-
火が明るく燃え、暖炉の傍には大きな肱掛椅子。
-
もうひとりもまたブロンドで、なんとなく厚ぼったい顔をした、ずんぐりした男だった。二人とも火に足をかざして、大きな肱掛椅子に腰を下し、新聞を読みながらしごく落着きはらってたばこをくゆらしていた。まるで彼女らがそこにいないかのように、もはやちりほどにも女たちのことなど気にかけていない様子だった。
...
-
ところでその夜、部屋に戻つて、姿見の蝋燭で葉巻に火をつけながら、ふと見ると自分の顔が死人のやうに青ざめてゐたのです!そして私は大きな肱掛椅子に身を埋めたのですが、それはボタン締めをした暗紅色の天鵞絨の古い家具で、そこで果てしない夢想に耽つてゐると、時の飛翔も少しはかろやかになるやうに思はれるのです。しかし憂鬱症の発作はいよいよ苦痛を増して、不安なまでに、切ないまでになつたのでした!
...
-
この日は、わざとそうしたのかどうかはわからないが、令嬢がこのいやな連中を気の毒なくらいやりこめた。ほとんど毎夜、侯爵夫人の大きな肱掛椅子の陰で小さなグループをつくる連中がいるが、ラ・モール嬢はこの中心だった。集まるのはクロワズノワ侯爵、ケーリュス伯爵、リュス子爵その他、二、三の若い士官で、いずれもノルベールかその妹の友達だった。
...
-
すると、小柄な老人夫婦が、それこそもうほんとによぼよぼの大変な年寄りが、深々と坐った大きな肱掛椅子から君のほうへ両腕を差しのばすだろう。で君は僕の代りに二人をまごころこめて抱いてやってくれ給え。
...
-
それは薬屋のかまどが一般の人のより大きいためであり、公共的需要が個人的好みにまさるためである。エンマが店にはいると、大きな肱掛椅子はひっくり返り、「ルーアンの燈」さえ床の上の二本の乳棒の間に散らばっていた。廊下の扉を押すと、台所のまん中に、つんだスグリの実のつまった茶色の壺や粉砂糖、砂糖の塊、テーブルの上には秤、かまどの火の上には手鍋。
...
-
やがて呼鈴で呼ばれたやよの取次ぎで、何度か上がったことのあるモイラの居間に行った。明るい外から入ると薄暗い居間の中で、モイラは寝台と右の壁寄りの洋服箪笥との間に据えた、黒い革の、窪み窪みに同じ革の釦を嵌めこんだような、大きな肱掛椅子にぐったりと寄りかかっていた。妙に底に光のあるモイラの眼にドゥミトゥリイは目聡く、前に見た時にはなかった或変化を、見た。
...
-
すると、ぐったりとなって、大きな肱掛椅子に腰を落し、放心の態で、瞼を半ば閉じ、心地よい悔恨の念に駆られて低い声でこう呟きながら、チビリチビリと己れの罪業を味わっていました。