夕飯の時
49 の用例
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冷たい所へとやつた刹那の感触は心好い嬉しいものであつた。
彼はふと夕飯の時に夫の唇から洩れた同情のある言葉を思ひ出した。
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田中貢太郎『あかんぼの首』より引用
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夕飯の時にも飯の後で老婆と新一が茶の間の行灯の傍で囁き合っていた。
田中貢太郎『狐の手帳』より引用
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詩人ベランゼが住んで居た縁故で記念の名を負うた「ベランゼの並木路」に臨んだ煙草屋は博士が七箇月間煙草を買はれた店で快濶な主人夫婦が面白いと云ふので今度も態態立寄つて煙草を買はれた。
主人夫婦と博士との立話が尽きない内に午後七時の夕飯の時が来た。
急いで旅館へ帰ると、二人の英国婦人に二人の加奈陀青年、二人の子供を伴れた一人の英国婦人、其れに主婦と、ヴウヴレエ市の学校で独逸語の教師をして居て春の休暇で帰つて来た一人息子とが既に食卓に就いて居た。
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与謝野寛『巴里より』より引用
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そうして夕方になって戻って来ました。
夕飯の時は、またお角を相手にして、軽快に四方山の話を語り出でました。
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中里介山『大菩薩峠』より引用
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と言いながら次郎は縁側に立って夕飯の時を待つ岸本の側へ寄った。
この兄の二番目の子供は「馬鹿やい」を言うほど岸本に対しても遠慮が無くなって来た。
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島崎藤村『新生』より引用
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朝早く隊へ出て、夕方帰って来て、夜は大がい自分の室で何か読むか書くかしていた。
で、子供等は朝飯と夕飯の時のほかは、めったに父と一緒のことはなかった。
それでも父は僕を軍人に仕込むことだけは忘れなかったようだ。
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大杉栄『自叙伝』より引用
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静蘭は大きくて丸くて塩分控えめのおにぎり。
お夕飯の時にヘンなこと言っちゃったから、気にしてたのね。
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雪乃紗衣『彩雲国物語 02 黄金の約束』より引用
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また、めずらしく今日は外出ができると思って喜んでいると、銃器の検査だとか清潔検査だとか触れて寝室にはいって来て、銃の手入が足りないとか靴に埃がかかっているとか言って、せっかく服まで着換えているのを外出止めにした。
ある日大尉は、夕飯の時に、きょうの月は上弦か下弦かという質問を出した。
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大杉栄『自叙伝』より引用
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あなたの話してくれたことをわたしは知りませんでした、というのは夕飯の時女中さんがわたしのそばに来なかったんですもの。
ディケンズ/青木雄造・小池滋訳『荒涼館(1)』より引用
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テーブルの上には、まだ夕飯の時の食器が残ったままだった。
夏石鈴子『家内安全』より引用
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淑女たちはこのことばを聞くと、彼の好むようにしようと申しました。
そこで王は、夕飯の時まで、めいめい好きなことをしているようにと暇をとらせました。
話が短かったので、太陽はまだ非常に高うございました。
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ボッカッチョ/柏熊達生訳『デカメロン(中)』より引用
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御嬢さんはすぐ障子を開けて茶の間へ入ったようでした。
夕飯の時、御嬢さんは私を変な人だと云いました。
私はその時も何故変なのか聞かずにしまいました。
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夏目漱石『こころ』より引用
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夜になって、片岡の家に日傭を取りに来た十幾人かは、夕飯の時から乾燥きっていた。
佐左木俊郎『駈落』より引用
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ついに夕飯の時になって見ると、その食膳は一人前であります。
これを以て見れば宿でもまた、自分に連れのあることは認めていないものと見なければなりません。
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中里介山『大菩薩峠』より引用
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彼は鈴子を促して家へはいった。
私は家へ帰ると、夕飯の時に伯父にその話をした。
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倉田百三『光り合ういのち』より引用
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それだけでも、どうかすると、汗が出かねない程、暖かい。
そこへ、夕飯の時に一杯やつた、酒の酔が手伝つてゐる。
枕元の蔀一つ隔てた向うは、霜の冴えた広庭だが、それも、かう陶然としてゐれば、少しも苦にならない。
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芥川竜之介『芋粥』より引用
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伸子は自分もそれを神経で感じた。
夕飯の時、彼女は元したように料理の手伝いをした。
その間、佃は部屋にいる。
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宮本百合子『伸子』より引用
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お嬢さんはすぐ障子を開けて茶の間へ入ったようでした。
夕飯の時、お嬢さんは私を変な人だといいました。
私はその時もなぜ変なのか聞かずにしまいました。
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夏目漱石『こころ』より引用
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お嬢さんはすぐ障子をあけて茶の間へはいったようでした。
夕飯の時、お嬢さんは私を変な人だと言いました。
私はその時もなぜ変なのか聞かずにしまいました。
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夏目漱石『こゝろ』より引用
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昭が母親の佐知子にそう言われたのは、夕飯の時だった。
「うん、そうだけど」 「やっぱり」と、佐知子は味噌汁を持った椀を並べ、エプロンを外した。
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小野不由美『屍鬼(下)』より引用