囲繞
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名詞
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金田一耕助はなんとなく胸が騒いだ。いまかれを囲繞している人物は、みんな終戦前後に重大な経験を持っている。越智竜平と巴とは昭和十九年に駆け落ちをして、丹波の奥の温泉宿にひそんでいたという。
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今日の私共を囲繞する社会は、「英雄と神との時代」を過ぎて居ります。社会の有機的組織の緊張は、其裡に生存する各箇人に、公衆との相互関係を痛感させます。
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十何世紀を積み重ねた我々の信仰生活は、明治の代に移って俄然として一変してしまった。神社仏閣の名と形は保存せられても、これを囲繞する人の境涯は昔でない。以前盛んに世間から取持たれて、今は存在さえ認められぬ職業も色々あり、それを忘れてしまってなお古風の持続を説こうとする学者さえすでに現われた。
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御母堂の鼻はシーザーのそれのごとく、正しく英姿颯爽たる隆起に相違ございません。しかしその周囲を囲繞する顔面的条件は如何な者でありましょう。無論当家の猫のごとく劣等ではない。
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船舶に依れば人は休んでいる間に交通し、物資は大量輸送が可能である。四面海に囲繞されているわが国は、海上輸送に依存することが盛んであった。近畿・西国の物資を東海・東国へ輸送する船舶が通行するのに、必ず通過するのは紀伊半島の南端である。
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しかし間もなく彼の姿は、八幡の境内へ現われた。そこには二個所焚火があり癩患者がそれを囲繞み、動物のように蠢めいていた。だが陶器師は刀を抜かず、二つの焚火の間を通り、跡部大炊の屋敷の方へ、小路伝いに歩いて行った。
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二尺ぐらいしか燃え上がらなかった。火を囲繞した五人の男女は、火の光を他へ洩らすまいとした。ピッタリ体を寄せ合った。
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今、二〇ワットの電燈の下に両方の壁が聳え立ち、窓は鎖され、扉には鍵がかけてある。さうすると、彼を囲繞する四畳半の鬼気が、彼を憫笑してくれるのであった。彼は今日街に出て一人の婦人と恋の散歩をした。
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学校で、この春まで、東京附近の高射砲隊にいた友坂教諭の話によると、昨日の敵機は一万二三千メートルの上空を飛んでいたという。東京の周辺には、高射砲陣地が二重に囲繞して出来ており、その砲数は三千ほどである。そしていま三重目の陣地が出来かかっているという。
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豆のように小さく見えているその番兵は槍を持ってこっちを見上げている。その中庭を囲繞して三つの城砦が立っていたが、三つとも巨大な角窓を中庭の方へ向けている。そして番兵が立っている。
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それに趣味は低下して、色調も俗になり、形態も貧弱となり、模様も醜悪になって来ました。これに囲繞される生活が、人間の美意識を濁らせる事は当然です。天才が作るわずかなものが美しいとも、それによってこの世は美しくならないのです。
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それは何といっても、かすかにもせよ、個性の働きによってのみその存在をつなぎ得るのだ。けれども若し私達の生活がかくの如きもののみによって囲繞されることを想像するのは寂しいことではないか。この時私達の個性は必ずかかる物質的な材料に対して反逆を企てるだろう。
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空気のにおいが、なんだかちがうようである。いままでの空気が死んだ空気だとすれば、いま佐七を囲繞している空気は、生きていて新鮮である。しかも、その空気はごくかすかだがうごいている。
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精霊の気が己を囲繞していたこの室で、 あんな人間の声が響いて好いものか。しかし下界にありとある人の中の人屑にも、 こん度は己が感謝せずばなるまい。
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自然的境界として最も理想的なものは海であり、大陸国家もまた大洋を目指してその領土を拡大しようとする理由は主にそこにあるとした。一方で、自然的領土については河川ないし河川囲繞と海洋囲繞であるとした。
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津江川の瀬音を圧して、ごおっごおっと伝わる響きは、背後の山から来るのか、対岸の山からなのか、それとも上流の山々からであるのか、耳を澄ませてもわからなかった。この小さな部落は川を前にして山々に囲繞されている。どの山からともしれぬ不気味な音は、間歇的に山裾の小さな部落を揺すり続けた。
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長かった信州の荒涼たる冬もこうして過ぎ去ってしまったのである。篠井の里の片端、野菜の緑に囲繞されて、一軒の農家が立っていた。背戸には咲き乱れた桜の花が、今昼風に繽紛と散り、その花弁の幾片かが縁の中へまで舞い込んで来た。
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