嗚咽
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名詞
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医者のことばを聞いたとたん、そこに居合わせた大勢の女たちは悲鳴をあげ、それが三十秒ほど続いてから、急に今度は声をふりしぼった騒がしい耳ざわりな悲しいすすり泣きに変わり、その中に混じって、男の低い声が時として聞こえてきた。それは深く沈んだ嗚咽の声だったかと思うと、悲痛な叫びだったりした。チャールズの乳兄弟に当たる者が悲しみあまって手を打ったり、こすり合わせたりしながら、群れている人々の間を歩き回っていた。
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激しい嗚咽のためになにかを訴えたくとも言葉にならない様子である。「弱ったな、さっぱりわけがわからない」 もはやスワップの雰囲気ではなくなった。
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照代の涙への気がかりが半分、仕事への気がかりが半分である。照代のこの今の嗚咽はおそらくなにかの作品の中に使えそうだとも思う。もちろん、照代の嗚咽への気がかりとは職業的な関心だけではない。
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さっきからおさえていた嗚咽が、ここにおいてついに爆発したのである。しかし、だれもそれをとがめるものはなく、かえってそれを契機として、あちこちで鼻をすする音がさかんになった。
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しばらくは身じろぎもならなかった。エルゼの嗚咽を聞いたような気がしたが、あれは風の唸りだったろうか。その夜はなかなか寝つけなかった。
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誰もが、しばらく拍手をすることさえ忘れていたということか。私たちの席についていた女の子が、気がつくと嗚咽をもらして泣いていた。「どうしたの」と私が訊ねると喉をひくつかせて言った。
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見ると、大三浦は左手の掌で眼を覆っている。これから二人の葬式をしようという感動が、低い嗚咽になろうとしている。架山は大三浦にも、佐和山にも言わなかったが、長かった〝殯〟の期間はいま終ろうとしていると思った。
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この世界に誕生して何かを好きになどならなければ、『死』による別れに怯えることもなかった。嗚咽まじりの声になったが私は作業台に寝たまま言葉を口から押し出した。
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こんなにも無力で、愚かな自分などに。次の作品が始まっても、終わっても、嗚咽はいつまでも止まらなかった。砕けてしまった手鏡を両手で包み込むようにしたまま、香子は立ち上がれもせず、声だけは必死に抑えて、背中を丸めて泣き続けた。
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セナは、ため息をついた。夕暮れの甲板で、嗚咽をこらえていた少年の声が、まだ耳に残っている。あの少年とヒュウゴが話しているのを、セナは階段のところでもれきいた。
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二週間前、とうとう大家が来て、家財道具と綾たちを外に放り出し、内に入れないように鍵をかけてしまったと言う。近くの公園で過ごした数日間の話になると、綾の言葉は嗚咽で途絶えた。そうするうちに武田に拾われ、ここに来た後、彼女の家に身を寄せた。
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ローター音が遠ざかってゆく。斉藤が手を重ね慰めている女子は、悲鳴をやめると静かに嗚咽していた。
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しかしその喉から出てくるのは、奇妙に引っかかった嗚咽のような音だけ。大日向は顔を背けた。
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私が受話器を耳に当てると、思いがけず娘の嗚咽する声が伝わって来た。以来、妻は家にいて、入院の準備をしている。
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後はスコットランドのグラスゴーまでは地続きだ。私の胸には、今にも嗚咽がこみ上げてくるような感動が湧き上っていた。ヒースロー空港はまだ暗かった。
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その夜、私の仕事に対して、ある賞をいただくことが決まったという報せの電話を受けていた妻は「ありがとうございます」と震え声で言ったまま絶句し、受話器を私に押しやると、台所に駆けこんで水道の蛇口をいっぱいに開いた。彼女は嗚咽を子供たちに気づかれまいとしているようにみえた。だが、いまになってわかるのだが、あのときの妻の神経は子供にはなく、私に嗚咽の意味を穿鑿されることの怖れに集中していた。
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彼の言ったことを思い出す。だれにも忘れ去られたような病院の片隅で、わたしの嗚咽だけが響いた。
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