問ひかけまし
17 の例文
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「此矢は何處に置いてあつたのだ」 平次は甥の鐵之助に問ひかけました。「靱に入れて、母屋の床の間に立てかけて置きましたが、彌太郎が玩具にして困るので近頃は柱にかけて置くこともあります」 鐵之助は何んの淀みもなく答へます。
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「あの空地で殺されてゐるのを、誰が先に見つけたんだ」 平次は誰へともなく問ひかけました。
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「それを、どうしてお前はお高に話したのだ」 平次はいきなり彌太八に問ひかけました。
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兎も角、奉公人に一應引合はせられ、お霜とお春の案内で家の裏表を見廻りましたが、餘程企らんだ仕事と見えて、手掛一つ殘つては居ません。「お前さんはその時何處に居なすつたんだ」 平次は責任者のお霜に問ひかけました。
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それは、却つて、卑屈にさへみえました。彼女は、ある晩、楽屋の入口に立つてゐる彼に向つて、耳もとでかう問ひかけました。
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「親分、なぜ縛らなかつたんです」 歸る途々ガラツ八は問ひかけました。
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「それぢや、昨夜とその前の晩、旦那の宗太郎さんは此家に居たかい」 平次は利助に代つて問ひかけました。
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それだのにこの美しい孔雀が、クレオパトラだつてサロメだつて楊貴妃だつて虞だつて美しさに於て到底この孔雀の姫の一筋の髪にすら及ばぬ、幻の花にも人の世では許されぬ、この美しい孔雀が、何故にあのやうに泣いて居たかを何よりも不思議がるのは無理もないことではありませんか。で私はクレオパトラやサロメの例を引いて、何故貴方はあのやうに嘆いてゐらつしやいましたか、と言葉を更めて新しく問ひかけました。
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身裝はお蝶よりいくらか派手ですが、顏立は淋しく冷たい方で、お蝶の豊麗なのと比べると、同じ美人の仲間には入つても、男好きの點は格段の違ひがあります。「今晩お蝶が家を出たのを知つて居たのか」 平次は、お輝の少し落着いた樣子を見て問ひかけました。
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肉體の豊滿さを買はれて、素人から妾奉公に出た女が、無暗に玄人の眞似をして、執つこく、脂つ濃く取廻すと言つた性でせう。「昨夜のことを訊き度いが」 平次は無表情に問ひかけました。
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番所へ送つた歸り、曉の霜を踏んで、ガラツ八は問ひかけました。
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「ところで、誰がお内儀さんを殺さうと企らんで居るのだ」 八五郎はザツと人別を明らかにした上、お縫に問ひかけました。もう酒の醉ひも醒めてしまつて、月の光の中に細々と佇んだ、内儀の身體にも露を置きさう。
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赤毛のキリヽとした顏立ちですが、何處か清潔で賢こさうで、美しくはないにしても何んとなく心ひかるゝ娘です。そのお夏が歸ると、その後ろ姿を見送つて、 「お前さんに訊けばわかるだらうが、此家は帳場で、どんな印肉を使つてゐるんだ」 平次は房吉に問ひかけました。
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「お前さんの手文庫の中から、小判で二百三十兩ほど出て來たが、あれは何うした金だい」 平次はこの念入りに化粧した顏を、出來の惡い人形でも見るやうな冷淡な眼で、ツクヅク眺め入り乍ら問ひかけました。
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そして、みなが、ほとんど一緒に部屋を出ました。すこし遅れて起ちあがつた巨摩六郎は、あとに残つた笹山千鶴子をつかまへて、かう問ひかけました。
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平次は元より無事、お村も水には馴れて居りますから、幸ひまだ命には別條ありません。この騷ぎが一と片附きすると、ありつたけの蝋燭を灯して、舞臺の上へ固くなつた人達が期せずして平次に問ひかけました。
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