口をきき合う
18 の例文
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両方で口をきき合うようになるには容易なことでなかった。クリストフのやや田舎者じみた乱暴な様子に、ユリー・エルスベルゼはびっくりすることがあった。
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疲れていながら二人とも妙に頭がしんと冴えていた。とても眠れそうになくて、それでいてまた口をきき合うのも億劫だった。しばらく彼らは、お互いの眼の中をまじまじとのぞき込みながら、黙ってしきりにたばこを吹かせていたが、やがてふと耕作のほうから口を切った。
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そこで得た他人との絆は、私にとって何故か胸のときめくものに感じられました。彼らと口をきき合ったことで、自分がかつて住んでいた世界に戻れたような気がしたのです。翌日、車を呼んで三崎の港に出かけ、港の人間に聞いて第三豊栄丸はすぐにわかりました。
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傷心のお雪は、母のお幸と共に根岸の寮で静養をしていたが、佐々木三冬も、一月から二月の末にかけて、和泉屋の寮へ帰っていた。お雪と三冬が口をきき合うようになり、お雪がよく、和泉屋の寮へたずねて来るようになった。
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シュナイダーと一緒に映画館にいたという老人に三人が身分証明書を見せてわけを話すと、彼は前夜の仲間のことを思い出してくれた。それによるとシュナイダーとは映画を見ているうちに口をきき合うようになり、二人がどちらもストゥットガルトの生れだということがわかったらしい。この老人はドイツ第三帝国の運命を予知して一九三五年に故国を去り、オーストラリアで新生活をはじめたのだが、たまたま故国を知っているものと言葉をかわして少年時代のことを思い出したので、夜を徹してシュナイダーと語り合ったというのだ。
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彼はその一方、最近数ヵ月間の新聞をひっくり返して、家出令嬢という記事を探して回ったが、そのうちにも白木静夫に一致しそうなのは一つとして見当たらなかった。撮影所の連中に聞いて回っても、だれ一人として、かなり長い期間に渡っての撮影であったにもかかわらず、彼と口をきき合ったものはないらしかった。結局、撮影所において白木静夫を最も多く知っていたものは、山野茂と、宇津木天馬と、そして自分自身にほかならないことを発見したぐらいのものであった。
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そのためには火をともさなければならず、磁石盤を中心に三人の顔が浮かびあがることになる。はじめのうち、ぼくたちは割合によく口をきき合った。暗いな、とか、もうすぐもっとましな道に出るはずだ、とかの、大して内容のない会話である。
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女も時々やって来る様子なのだが、木屋はその姿を確認したことがない。木屋が、村田と口をきき合うようになったのは、近くにできたサウナ風呂でいっしょになったのがきっかけである。それまでも、同じアパートの住人として廊下などで出会えば、目礼ぐらいは交していた。
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彼女がその男とはじめて口をきき合ったのは、まるで安物の三文小説の設定に似て、新幹線の座席に隣り合って腰をかけたときだった。厳密な意味からすればどちらもそのときが初対面ではなく、いままでにも遠くで顔を合わせる機会は何度かあったが、口をきくまでには至らなかったのである。
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そこでは、彼が隻腕であることに眼を向ける人も居なかった。顔見知りになっても、口をきき合うこともない。みんな自由に出入りし、ひとりで自由に格闘していた。
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近頃の運転手は、行先を告げても、ろくに返事をしない。でも、人間はなまじ口をきき合うから、話がもつれたりするので、判っていさえすれば返事はない方がいい。経験でそう彼は思っている。
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我慢に我慢を重ねたのち、たまりかねて夫にいい出たものである。伊太郎のほうも、はじめから、お順を無視しつづけてい、両人が口をきき合うことなど、ほとんど無かったといってよい。食事の世話だけをうけている伊太郎は洗濯も自分でしたし、たまさかに野村に小遣をもらうと、二日三日を留守にすることはあったけれども、そのことを、お順が不快におもったわけでもないだろう。
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もっともこの二人は、それぞれ東京で職を持って相応に身を立てていますから、年に二度三度会いますが、私とは方面が違うので、あまり親しく往来はしないのです。けれども、会えばいつも以前のままの学友気質で、無遠慮な口をきき合うのです。この日も鷹見は、帰路にぜひ寄れと勧めますから、上田とともに三人連れ立って行って、夫人のお手料理としては少し上等すぎる馳走になって、酒も飲んで「あの時分」が始まりましたが、鷹見はもとの快活な調子で、 「時に樋口という男はどうしたろう」と話が鸚鵡の一件になりました。
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たった今、東大寺の男奴と口をきき合った、きずに薬を塗布してやった、それとこれと関係があるのか?いったい何の話なのだ?
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しかし、大治郎が浴舎へ入って来たときから、浪人はしずかに温泉へつかって、こちらをながめてい、殺気も剣気もなかった。たがいの裸身には針一本もつけてはいないことゆえ、それは当然でもあったし、そもそも、この浪人と大治郎とは、顔を見たのも今日がはじめてで、口をきき合ったこともない間柄なのだ。それでいて、昼間の街道で、あのように二人が牽制し合ったのは、双方が強かな剣士であったからにすぎない。
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餓えた狼の危険な体臭である。「ああ、つまらねえな」 頬の削げた長身の若者が言ったのが、口をきき合うきっかけになった。「なにか一発でけえことをやりてえな」 「でけえことってなんだ」 小さい目、丸いひしゃげた鼻、唇が分厚く歯の間がすけている若者が口を出した。
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だが、それはほんとうに束の間であった。私たちが最初口をきき合ってからちょうど九ヵ月目、私ははっきりと覚えている、大正十四年六月二十五日であった。その日限り私たちの関係は打ち断たれてしまったのである。
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