危うい均衡
24 の用例
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一本目の煙草に火を点け、深々と紫煙を吸って吐き出しながら、耕司は独り居間にくつろぎ、手の中の拳銃に見入った。
いま自分が危うい均衡の上に立っていることは、耕司も自覚している。
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虚淵玄『沙耶の唄』より引用
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表面的には平和な共同生活だが、それは危うい均衡の上に成り立っているものだった。
それぞれの生活をしながらも、皆が息をひそめてカイルロッドの一挙一動を見守っていた のである。
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冴木忍『カイルロッドの苦難 6 悲しみは黄昏とともに』より引用
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多分、と彼女が口にしたところで、危うい均衡は破れてしまった。
竹宮ゆゆこ『とらドラ! 第01巻』より引用
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汗が頬を伝う。
少しでも動いてしまうと、女との危うい均衡状態が崩れそうで、汗を拭うことすらできない。
わたしは今、奈落へ続く大穴の上で、細い糸の上に正座しているのだ。
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乙一『平面いぬ。』より引用
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信じていなければ、そもそも同人雑誌など作らない。
私の自信は危うい均衡の上に立っていた。
力を証明するのに新人賞への応募が一番である。
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高橋克彦『前世の記憶』より引用
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優しさと、官能と、復讐心と暴力とが危うい均衡で存在していた日々の記憶なのだ。
かつてシュリルは、長い時間を放っておかれ、だれにも心を配って貰えなかった子供だった。
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山藍紫姫子『アレキサンドライト』より引用
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以前よりもずっと危うい均衡で、その場の力は膠着した。
小野不由美『十二国記 04 風の海 迷宮の岸(下)』より引用
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やがて、条約にはフィレンツェや法王領を含む多くの都市が加わることになり、その結果、戦乱に明け暮れていたイタリアには、一応の平和が訪れることになった。
きわめて危うい均衡の上に成立した、表向きの平和である。
条約に加わった各国は、こうしている今も水面下で策を弄し、互いに牽制を続けている。
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三雲岳斗『聖遺の天使』より引用
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組織が、そして個人が常にいがみ合い、力で優劣を決めることしか知らないこの国には未来がない。
現在でこそ、十侯会議のもとに危うい均衡で内乱が抑えられているが、それも長続きはしない。
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九里史生『SAO Web 0406 第八章01』より引用
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俊輔ばかりではなく、最初から、ヒロや南からも忠告されていたのだ。
このままでは、秋生は、危うい均衡の上で成り立っている少年たちの人間関係を乱す者になってしまうかも知れないのだ。
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山藍紫姫子『堕天使の島』より引用
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後を追っていたシルヴィンたちの飛竜が、止まり切れずディーノの飛竜にぶつかった。
危うい均衡をもってなんとかその場に留まっていただけの飛竜は、後ろから迫りきた彼らの鼻先が不意をつくように軽く触れただけで簡単にバランスを崩した。
三頭の飛竜はもつれあい先を争うようにして、勢いよく暗い風穴に吸いこまれた。
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流星香『プラパ・ゼータ 4 玻璃色の迷宮』より引用
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鴨の重みと薄い氷の間に生じている危うい均衡と緊張を「たわたわ」の一語がみごとに生かした。
なお「薄氷」は俳句の季語としては冬でなく、初春を意味する。
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大岡信『名句歌ごよみ[冬・新年]』より引用
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それぞれのデスクの上にはデスクトップパソコンとキーボード、電話機が置かれ、その間に文房具類が散乱している。
さらにデスクの両端には雑誌や書類の束が危うい均衡を保ちながら積み上げられている。
ライターの仕事で何十回と目にした光景だ。
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加藤実秋『インディゴの夜 全4話』より引用
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通りすぎる風に、エドワードは、今にも壊れそうな町の危うい均衡を嗅ぎ取っていた。
宿代わりの家に着くまで、アルフォンスは一言も口をきかなかった。
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井上真『鋼の錬金術師3 白い花の舞う谷』より引用
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いつのまにか、前夜と同じように雪は丹念に掻かれており、母屋に向かう小径ができていた。
下駄の歯が凍結した雪面に触れるたびに、危うい均衡を保ちながらも軋み音をたてる。
ふたりは手をつないでいた。
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小池真理子『虚無のオペラ』より引用
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ギルガメッシュの目に殺意が宿る。
元々、危うい均衡の上に成り立っていた関係だ。
いつ壊れてもおかしくはない。
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事務狂『fate/stay night 月姫 (TYPE MOONクロスオーバーの最高峰、文庫5~6巻のボリューム)』より引用
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だが、と静信は思う。
沙子の生命は危うい均衡の上に成り立っている。
そう、命は脆いのだ、人間がそうと信じている以上に。
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小野不由美『屍鬼(上)』より引用
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敵対関係の二大国の危うい均衡状態が続く中、キムラスカ公爵家の一人息子・ルークがマルクトの者に誘拐される。
後に救出されたものの、ルークは全ての記憶を失っていた。
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過去には、子供が突然姿を消したので、パソコンに残された閲覧履歴を見た親が捜索願を出し、間一髪で発見・自殺を思い留まらせることに成功した事例も報道されている。
特に、プライバシーの尊重を求めながらも危うい均衡状態を保っている未成年者の場合は、家族の働き掛けが大きな防止要因になることも多い。
独立した別個の人格であることを尊重しながらも、些細なサインも見逃さないケアが求められており、近年の多忙を極める社会状況にあって、なお難しい問題が突きつけられている。
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互いに連れ子同士であることはもう知らされていたから、普通の兄妹の間にゆきかう感情とは微妙に違っていたかもしれないが、それでも暁は自分にとって〈兄〉だったし、彼にとって自分はやはり〈妹〉だったと思う。
けれど、危うい均衡はやがて、ふいに崩れた。
事件から三週間ほどがたち、その日、八月半ばの境内は猛々しいほどの緑に覆われていた。
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村山由佳『星々の舟』より引用