匂いが漂う
76 の例文
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おばさんのまわりには暗い部屋にいてもわかる独特の匂いが漂っている。「ふとんをかけておやり」ミスター・ウルフが低い声でポルおばさんに言った。
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落ち窪んだ目を固く閉じていても、由希はまだゆっくりとした規則正しい呼吸をしている。しかしその身体からは、すでに生命の終わりを告げる匂いが漂っていた。
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秀麗たちが次に向かったのは、あちこちから良い匂いが漂う通りだった。
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延々とどこまでも広がっていた荒れ野原も徐々に開墾された畑へと変わっていき、ぽつりぽつりと作業をする人の姿も見え始めた。この、徐々に人の生活の匂いが漂い始める風景の変化はいつ見ても面白い。そんな頃になってようやく件の魚を積んだ荷馬車と合流した。
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あの奇妙な匂いが漂うアパートで、今夜もあの男と過ごしているのだろうか。そのことばかりを考えた。
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百姓家の牛を撲殺、醤油に味醂、胡麻、蜂蜜を混ぜ、野蒜、韮なども混入して焼いた肉をこれに浸して食べ、焼き肉と嘯いていたそうです。周囲五里に牛肉の匂いが漂って近在のものは鼻をつまんで通行しました。また、これを食って精がついたのか、近所の娘女房後家、みさかいなく手籠めにして、えらいこと騒ぎになりました。
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かれらの村はどろどろした地面の上に打ち込まれた杭を組み合わせたものの上に建てられていた。あたり一面にはどこの漁村にも特有の、死んだ魚の匂いが漂っていた。ボートを売る意志のある漁師を探すのはひと苦労だった。
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そういえば達三と富永の死体を見た時も同じだった。彼らからは何ともたとえようのないなつかしい匂いが漂い出していたのだ。もちろんそれは死んだ肉の匂いでもあったけれども、それだけではなかった。
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下流では両岸に平地を作りつつも山の中を流れ、南から東に向きを転じて、登別市街の南で太平洋に注ぐ。温泉の影響により河口付近までわずかに硫黄の匂いが漂うことがある。上流ではマスが釣れる。
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「むろん前にも言った通り、おれもあんたのことは好きだ」 メイが照れ笑いするのを見届けて、おれは店を出た。夜の通りに、サイゴン河からのものだろうか、水の匂いが漂っていた。露天商の軒下に並ぶ風鈴が涼しげな音色を奏でている。
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寝ているわけではないらしい。そばに寄ってみると、寝床のまわりには長兄の涙の匂いが漂っていた。「兄貴」と声をかけたが、なかなか二の句が継げない。
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この家の内部にも、古い線香のような匂いが漂っているみたいに感じられる。まったく、抹香臭い家の中で、せめてもう少し明るい色の服でも着たらいいのにと、真田は猫背な女の後姿を見守りながら思ったりした。
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バス停に呆然と座りこんでいた間に、激しかった雨も上がった。時間はすっかり夕食時で、そこここの家からおかずの匂いが漂ってきている。瀕死の状態でどこをどう歩いたやら、とにかく家には帰り着いた。
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さらに、僕の嗅覚も生きている。隣室から微かにコーヒーの匂いが漂ってきていることを、脳は知っている。だが、やはり僕の意識にはわからない。
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きょうはお盆の入りであった。それで気がつくと、隣りの部屋からかすかに線香の匂いが漂って来ている。
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慶彦が気づいたのはその明かりだった。そこへ向かう途中で、何かが焼けたような煙の匂いが漂っているのに気づいた。匂いはモルタル塗りの建物と隣りの高い塀との間に置かれたドラム缶のほうから漂ってくるようだった。
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ぼくは、間接的な加害者になっている。火の消えたあとの商店の写真からは、焦げ臭い匂いが漂ってきそうだった。
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