切れ
全て
動詞
名詞
24,545 の用例
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彼は親切そうに微笑み、全てを知っているようなそぶりをしつつ、答えを探しに心の中に沈み込んでいくのです。
浮上したときには、それらしい情報を持ち切れないほど手にしています。
が、よく調べてみると別の世紀の話だったりして、再び仕事にかかります。
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キャロル・ルイス『心を養う』より引用
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会話が、少しもわからず、さりとて、あの画面の隅にちょいちょい出没する文章を一々読みとる事も至難である。
私には、文章をゆっくり調べて読む癖があるので、とても読み切れない。
実に、疲れるのである。
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太宰治『弱者の糧』より引用
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木の枝は、北風が力んだので、二、三べんも、細い身を揺すらなければならなかった。
広い野原の上には、雲切れがして、青い鏡のような空が見えていました。
木の枝は、それを見ると、無上になつかしかったのです。
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小川未明『風と木 からすときつね』より引用
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それほどになるのも考えものであるとも思うが、しかしたとえ楽しみ事にしろやっぱりそこまで行かなければつまらないとも思う。
畑に栽培されている植物の色が一切れごとにそれぞれ一つも同じものはない。
打ち返されて露出している土でも乾燥の程度や遠近の差でみんなそれぞれに違った色のニュアンスがある。
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寺田寅彦『写生紀行』より引用
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不意に彼らの一団の上に、華やかな光が輝いた。
空を蔽うていた森林が切れて、そこから日の光が落ちて来たからである。
と、彼らの一団の中で、雪のように白く輝く物があったが、それは三頭の白馬であった。
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国枝史郎『生死卍巴』より引用
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それが俺に取つては實際苦痛で堪らない。
あのまゝで行くと俺の銀行の地位は持ち切れなくなるかも知れないよ。
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島村抱月『人形の家』より引用
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そんなひどい奴か。
ラジオや電話が切れたと思って、市民の心を乱してゆこうというのだな。
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海野十三『空襲警報』より引用
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やっと笑い止んだ女たちの一人は蔑むようにこう云いながら、じろじろ彼の姿を眺めた。
が、その声には、まだ抑え切れない可笑しさが残っているようであった。
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芥川竜之介『素戔嗚尊』より引用
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彼はトラックをバックさせて板塀に横づけし、あいにくメモ用紙も鉛筆もなかったので、それを引っ剥がして持ち帰った。
端の千切れたポスターに印刷された大会開催日は、一カ月後に迫っていた。
見に行くだけにするか、出場してみるか、論議した末、とりあえず話を聞いてみようと、ポスターの端に小さく書かれていた事務局の電話番号にダイヤルしてみた。
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佐野良二『われらリフター』より引用
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其夜、看護婦は徹夜をしました。
私は一時間程横になりましたが、酸素が切れたので買いに走りました。
そのうちに夜が明けたので、看護婦を休ませて交替しました。
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梶井久『臨終まで』より引用
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町奉行から小者即ち岡っ引に渡してくれる給料は一カ月に一分二朱というのが上の部で、悪いのになると一分ぐらいでした。
いくら諸式の廉い時代でも一カ月に一分や一分二朱じゃあやり切れません。
おまけに五人も十人も手先を抱えていて、その手先の給料はどこからも一文だって出るんじゃありませんから、親分の岡っ引が何とか面倒を見てやらなけりゃあならない。
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岡本綺堂『半七捕物帳』より引用
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その尖の方は、あまり強く叩いたので、ささらのように裂けていた。
それからよく見ると、その竹切れの上には、なにか赤いものがついていた。
指先でさわってみると、それは血であった。
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海野十三『地球盗難』より引用
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いったん元の住みかに帰っては、人間との縁は切れてしまったのです。
楠山正雄『葛の葉狐』より引用
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仮に生きた鮎が手に入るとしても、素人がこれを上手に串に刺して焼くということはできるものではない。
鮎といえば、一般に水を切ればすぐ死んでしまうという印象を与えている。
だから、非常にひよわなさかなのように思われているが、その実、鮎は俎上にのせて頭をはねても、ぽんぽん躍り上がるほど元気溌剌たる魚だ。
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北大路魯山人『鮎の食い方』より引用
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さすがにおめえも一の子分だけあって、あごの油の切れねえのは豪勢だ。
なぞを解くすべてのかぎは、まさにその手首に見えるくくりあとだよ。
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佐々木味津三『右門捕物帖』より引用
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歴史の必然などといふ、人間の必然、そんなもので割り切れたり、鑑賞に堪へたりできるものなら、文学などの必要はないのだ。
だから小林はその魂の根本に於いて、文学とは完全に縁が切れてゐる。
そのくせ文学の奥義をあみだし、一宗の教祖となる、これ実に邪教である。
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坂口安吾『教祖の文学』より引用
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嚇かすだけならば好いぢやありませんか?
肩に金切れなんぞくつけてゐたつて、風の悪いやつらも多い世の中だ。
ましてわたしは乞食ですぜ。
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芥川竜之介『お富の貞操』より引用
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ドレゴは言葉の終りをそう結んだ。
しかし正確にいうと、彼のこの言葉は完全だとはいい切れなかった。
なぜならば彼はもう一つ水戸に語るべき事柄を忘れたのであった。
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丘丘十郎『地球発狂事件』より引用
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教師がそのコンフィデンシャルなものを私に覚られたと気づきはしまいか、といふ心配なのだつた。
私は自分が彼の苦痛の原因になることがやり切れなかつたのだ。
私は帰ると母に、投げやりな調子で「今度も総代だつてさ、ちえつ」と報告した。
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神西清『母たち』より引用
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永い間にはこの部落の中にも様々な変遷が有った。
持ち切れなくて出て行く者も多かったが増えることも増えたものだ。
勝太や新蔵の子供の頃には僅か十四軒だった森田部落も今では四十軒の余になってゐる。
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金田千鶴『夏蚕時』より引用