冴え冴え
208 の用例
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顎のあたりにはあらゆる種類のかわいい小さなえくぼ《・・・》があり、笑うとつぎつぎに消えて行くのだった。
それにどんな少女も持っていないような冴え冴えした眼を持っていた。
とにかく人を焦らすような女であった。
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ディケンズ/村岡花子訳『クリスマス・カロル』より引用
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決して暑くなどないのに、右目の脇を嫌な汗が流れ落ちる。
見苦しく肩で息をするおれの背中に、冴え冴えとした声が掛けられた。
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喬林知『今日からマ王 第11巻 「めざせマのつく海の果て!」』より引用
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彼は試しに片手を挙げた。
丘に向かって掌をかざすと、掌越しに緑の丘と冴え冴えとした光輝が見えた。
光は彼の掌を貫き、彼の目を貫き、脳裏を抉って彼の背後にある大地を刺した。
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小野不由美『屍鬼(下)』より引用
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しかし彼女の顔色は何も気づかぬように冴え冴えしていた。
芥川竜之介『春』より引用
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自分が妹たちにどんな気苦労をかけるか、そしてまたそれが彼女たちにとってはいかな喜びとなるか、どのように愉しい思いで、菜園の奥で妹たちが愛する兄のことを、こっそり語りあっているか、ちゃんとそれが彼には解っていた。
彼の自意識は急に冴え冴えとし、妹たちの姿が眼前に浮かんできた。
ささやかなその貯え金を、こっそり勘定しているさまだの、乙女のおぼこげな術策を弄して、その金を匿名で送りつけ、気高く振舞おうと、生まれてはじめて欺瞞を企てている図なのが、彼の目先には見えるようだった。
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バルザック/小西茂也訳『ゴリオ爺さん』より引用
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妻は得意になると、殆んど美人といっていいほど、冴え冴えした顔色で美しい。
田辺聖子『ブス愚痴録』より引用
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ゆがめるのは、間違っている。
遠く冴え冴えと光る星を見ているような気持ちで、エリンは、そう思った。
どれほど多くの事情が絡み合っていたとしても、生き物の生をゆがめるのは、間違っている。
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上橋菜穂子『獣の奏者 Ⅲ 探求編』より引用
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リュウジはアントニオやエミリオと言葉を交わすことなく、学校へと自転車を走らせた。
午後の特別授業を終えて寮に戻るが、目が冴え冴えとしていた。
シエスタは習慣になっているが、今日に限っては睡魔はやってこない。
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野沢尚『龍時(リュウジ)01─02』より引用
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ヨシュアは瓦礫の上に立ち、一心にグラシアを見つめる。
少年の髪は逆立ち、月光にも似た冴え冴えとした銀色の輝きを発していた。
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千葉暁『アルス・マグナ4 大いなる秘法 邪教の都』より引用
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その冴え冴えとした顔に向けて、メリヒムは引き止めるために叫んだ。
高橋弥七郎『灼眼のシャナ 第10巻』より引用
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そのように語られる瞳の冴え冴えと美しかったことを忘れない。
祇王寺は平家物語に書かれた清盛の寵姫、祇王が、仏御前に寵をうばわれたのを悲しんで仏門に入ったことがはじまりである。
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田中澄江『なぜ愛なのか 十三の報告から』より引用
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そう言う少女の目には冴え冴えとした知性の輝きが現れていた。
神野オキナ『あそびにいくヨ!第02巻』より引用
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銀平も、平素と全く異なる冴え冴えとした表情で、大介に和した。
乾杯がすむと、学生クルーは、積んでいた伝馬船を降ろして、島の周辺の点検に出かけて行き、甲板に残った大介と銀平は、キャビアとアスパラガスを肴に、グラスをかたむけた。
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山崎豊子『華麗なる一族 中』より引用
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あるいは自分自身に水をかけているような不思議な気もした。
夜が冴え冴えと青く、女の負の力を見た感情が心を満たしていった。
さっき若い刑事が言っていたできごと。
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塚本晋也『悪夢探偵』より引用
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寝返りをうつたびに音を立てるマットレスや、カーテンを揺るがすほど豪快ないびきが気になったわけではない。
体は疲れきっているはずなのに、頭は冴え冴えとしている。
「故郷」の六倍にも達する重力を受け止めた骨、今日一日の過激な運動を記憶した筋肉、死の恐怖と性の衝動を一時に経験した血がそれぞれ騒ぎ立てて、ロランに眠りを許さないのだった。
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福井晴敏『∀ガンダム(上)』より引用
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すると、明近い空の遠くに冴え冴えと朝の電車の動きだす倉皇とした音も聞えた。
坂口安吾『竹藪の家』より引用
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凍え死ぬまで寒いのが判らない、なんて。
氷の彫像のように冴え冴えとしたジャックの横顔にそっと目をやる。
カディルが死んだあの夜以来、彼は涙を見せていない。
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縞田理理『霧の日にはラノンが視える1』より引用
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無論、もう電車などは通つてゐなかつた。
二筋のレールが、冴え冴えと水のやうに静かな路上に光つてゐた。
兵野は、一体、これは何処かしら?
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牧野信一『露路の友』より引用
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一時間ほどして、四人は、その料亭を出た。
十三夜ぐらいの月が、冴え冴えとした光を放っていた。
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源氏鶏太『天上大風』より引用
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私のことなど、忘れてしまえ。
身体は睡眠を求めているのに、妙に頭は冴え冴えとしていた。
それでもいい、私は同じ姿勢のまま目を閉じてそこに横たわり続けた。
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今野緒雪『マリア様がみてる 03 いばらの森』より引用