冴えかえる

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  • 長途の旅行に体は綿のように疲れながら、神経のほうは針のようにとがって、私の頭はえかえるばかりであった。 横溝正史『金田一耕助ファイル01 八つ墓村』より引用
  • 一瞬、私は冴えかえる冷静な心をとり戻した。 藤原晋爾『秋津温泉』より引用
  • 表面にけずり出しのような軽くく紅いろの薄雲が一面に散っていて、空の肌質がすっかり刀色に冴えかえる時分を合図のようにして、それ等の雲はかえって雲母うんも色に冴えかえって来た。 岡本かの子『金魚撩乱』より引用
  • 夜八郎が冴えかえる月光をあびて、微動もせずにうずくまっていた時間は、およそ半刻であった。 柴田錬三郎『われら九人の戦鬼 (下)』より引用
  • えかえる初春の空に白光しろびかりする羽たゝきして雲雀が鳴いて居る。 徳冨蘆花『みみずのたはこと』より引用
  • 冴えかえる寒月は川の面に映じ、夜舟の櫓の音も凍るよう。 久生十蘭『魔都』より引用
  • 腹は立つし、便意はたかまるばかり、気も狂わんばかりとなって、逆に頭は妙なぐあいに冴えかえる。 野坂昭如『てろてろ』より引用
  • 市子は冴えかえる頭で、大杉との過去のすべてを一齣ひとこまずつひきずりだすように瞼の中に再現していた。 瀬戸内晴美(寂聴)『美は乱調にあり』より引用
  • さて、それは、いかなる深い意味をもっているか、帆村の頭脳は麗人糸子の身近くにあることを忘れて、愈々いよいよ冴えかえるのであった。 海野十三『蠅男』より引用
  • そして、薄暗い、どの道路からも数マイルも離れている、これらの石室のひとつで、冴えかえる靴音がその小屋に近づいてくるのを聞いたのであった。 ドイル/鈴木幸夫・鮎川信夫・齊藤重信『シャーロック・ホームズ全集(上)』より引用
  • 砂にまみれ、うちのめされて、しかし男は、やはりすべてが筋書きどおりに搬んだのだと、動悸どうきだけが痛いように冴えかえる、しめった下着のような意識の隅で、ぼんやり考えていた。 安部公房『砂の女 (末尾補完)』より引用
  • 床にははいつたものゝ、あれこれと思い悩むばかりで、なにひとつ、解決のいとぐちを見出すことはできず、冴えかえる瞼をじつと天井に向けて、夜の明けるのを待つた。 岸田国士『光は影を』より引用
  • 夜回りの拍子木の音も、シーンとえかえるころになると、ひとしきりごったがえしていたいたち屋も、どうやら一段落ついた形、何せ丹左をのぞくのほかはことごとく女ばかりの三十人、宵のうちは随分騒々しいことであったが、こうして寝鎮まってしまうと、まるでおこりが落ちたよう。 横溝正史『髑髏検校』より引用
  • 国府の四門の陣にはえかえる星空を焼くばかりに篝火かがりびき立て、いかめしく甲冑かつちゆうした兵がかため、正庁内にはともし火を立てつらねて、小次郎以下の諸将が掠奪ものの衣冠姿で列次を正していながれた。 海音寺潮五郎『平将門 下巻』より引用
  • 夜が更けていちだんと静けさがえかえる。 矢口純『酒を愛する男の酒』より引用
  • えかえる寒気だ。 林不忘『巷説享保図絵』より引用