八万四千人
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ゆらい日本の女性は、ひとえに内向的で内気な弱い花といわれてきたが、この藤三娘の書の勝ち気で自由奔放なふうは、現代の日本女性にも負けていない。そしてこのような皇后や正倉院宝物のすべてを産んだ世代は、日本の総人口もまだ四百五十八万四千人そこそこの土壌でしかなかったことも、あたまにおいて見るべきだろう。それと、日本の仏教興隆のあけぼのは、やはりこのような女性の手が大きく受けとっていたこともまた見のがせない。
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「惜別」が完成したのは二十年二月末であるが、太宰はひき続き「お伽草紙」の稿を起した。サイパンを基地とするB29の空襲が本格化しはじめた頃で、東京では連日のように空襲警報が発令され、三月十日夜半にはB29百五十機の無差別爆撃により下町一帯が灰燼に帰し八万四千人の死者を出している。すでに硫黄島にも米軍が上陸し、戦局は末期的な様相を呈していた。
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