傾城屋
89 の例文
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「あの、およしなされまし」 しかし女はおどおどと、その武士たちの袖をひいてとめている。うしろに傾城屋の亭主たちも不安そうについて来ているのが見えた。「新免という牢人はおぬしか」 と、一人がいった。
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傾城屋の楼主もしんでおりましたんだんが、そりゃあ厭な男でしたんし。殺されたもう一人は、君香さんと一緒に金を持って逃げた鉱夫ということでしたが、私は知りません。
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すぐに男が覆いかぶさってきた。傾城屋ははじめてでも、女ははじめてではなさそうだった。男は性急に腰巻きをめくり、中に入ってきた。
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さすがに大名らしい風格は具えているが、少年時代野武士の子として育っただけあって、その面貌に、ほかの大名には見られない野性がたしかにある。その彼が、いま駿府の傾城屋に上りこんだのは、しかしその野性のせいではない。ある女に恋着したからだが、それにはまた特別のわけがあった。
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こんなところにいるのが見つかったらことだ。どきりとしたが、私が自分の持つ傾城屋にいる遊女とはわからないだろうと思い直した。壱之介は、実際の運営を妾である女将にまかせている。
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昼食の後、女将と話していたおかげでいつもの時間より遅れてしまった。遊女仲間が皆、銭湯に出ていった後、私は一人、傾城屋の前の坂道を下っていった。坂道のあちこちに蝉の死骸が転がっている。
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直接にではないが、その牢人は、絵を売るのだ。いつごろからそんなことになったのか、彼は傾城屋を通しておのれの絵をひさぐ習いになった。しかも、傾城屋には一文の仲介料もやらない。
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「やれ」 ヒョット斎たちは、はじめて山城の意向を了解した。むろん大石に傾城屋で遊んでもらったお礼などではない。おそらく山城は、いつぞや浅野家の侍を斬ったわびのつもりであったろう。
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大名の屋敷でさえ、その手際の凄まじさに胆をつぶして、大半は無抵抗であったらしく、まれに刃向った者があると容赦なく斬り伏せられ、いずれにしても外聞をはばかって、あまり探索に協力的でない被害者たちから、しかし半蔵は、やっと共通したある事実をつかんだ。それは彼の調べた七十八軒の家のうち、その三十一軒がある傾城屋から遊女を呼び入れており、六十五軒が古着買いを呼びこんでいることであった。いずれも盗賊に襲われる以前数か月以内である。
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しかし次第に遊女を取り締まる動きが起こる。室町時代には、足利将軍家が京都の傾城屋から税金を徴収していた。
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下町を突っきると、豊永楼の建っている高台へと続く坂道になる。私が働いていた傾城屋も、遠目には昔と変わらないように見えたが、近づいてみたら、やはり寂れていた。二階の雨戸は閉まっているが、玄関の格子戸は外されている。
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もとより北条家の血をひく姫君である。しかし、いまは大盗に養われ、傾城屋に住む娘のはずであった。にもかかわらず、半蔵はいままでに、どこの大名、どこの公家の姫君にも、これほど玲瓏たる女人をみたことはない。
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不審は傾城屋にあるといったではないか。客のおれが、何のためにこの顔を。
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急使として女房が傾城屋に乗り込んで来たために、自分が見せた大狼狽の醜態を思い出したのだ。「小波には、例の何とか鎖はかんべんしてつかわせ、と申しておいたが」 丹波は頭をかかえた。
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そうと知れば、それが当然だと思う。いかになんでも安房九万二千石の奥方がひとり出奔して、場所もあろうに江戸葭原の傾城屋にいるなどということはあり得べきことではない。それにまんまとひっかかったのがほかならぬじぶんだから、配下への手前もあるし、腹がにえくりかえるようだが、しかし、それにしてもじぶんの直感ではたしかにただものではない、高貴な匂いのする女だと思われたのだ。
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例によって、その牢人が一軒の傾城屋に上り込んで、以前から執心であった一人の遊女を名ざした。やがて、女が来た。
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偽物ではあるが、大体弾左衛門がそんな偽物を以てその権利を主張したということは、もともと長吏なるものが、他の非人を支配の下に置いたものであることを示している。その数もと二十八座とあるが、後には段々と増して四十余となり、湯屋・風呂屋・傾城屋等も、みなその中に加えられることになっているのである。この書類に基づいて弾左衛門はその支配権を主張し、しばしば種々の問題を惹起した。
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