何処までも何処
17 の例文
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的もなしに、戸外に出たかった。暗い道を何処までも何処までも、歩いて行きたいような心持になっていた。が、母に対して、散歩に出ないと云った以上、ホテルの外へ出ることは出来なかった。
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的もなしに、戸外に出たかつた。暗い道を何処までも何処までも、歩いて行きたいやうな心持になつてゐた。が、母に対して、散歩に出ないと云つた以上、ホテルの外へ出ることは出来なかつた。
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春の靄が燈火を滲ませているコンクリイトの夜道の上を、子供は飛礫のように飛び、車は黒い翼の鳥のように羽ばたいた。子供と車とは何処までも何処までも走り続けた。
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山も無く川も無く雲も無く、灰色の土がセージブラッシュにおおわれて何処までも何処までもつづいている。その不毛の土地の上へ朝の太陽が強烈な熱と光を放射し始める。
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夜闇とて、いつまでも鬼の誘惑から逃げ続けることはできないだろう。何処までも何処までも、鬼は追いかけてくる。
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仕事をするにも、そんな風に思われていると、非常に迷惑なんです。友達の手紙の中に私の名があったから、帳面に書かれて了って、こうやって何処までも何処までもついて来られるんですが、その帳面から名を消して戴くわけには行かないでしょうか。調べるなら、いくら調べて頂いても好いんです。
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それは哥薩克の部落であって鶏犬の声や馬の嘶きや若い男女の笑声などが風に運ばれて聞えて来る。若い放浪者はドン河に添うて矢張り疲労れた足どりで何処までも何処までも歩いて行く。そして其顔には恐怖と憂鬱が執念く巣食っているのであった。
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妾はコンナつもりで結婚したはずじゃなかったのよ。妾はこのまんまパンクしたタイヤみたいになって、何処までも何処までも転がって行かなければならないのでしょうか。店の先にブラ下がっている派手なメリンスのキレが眼に付いて眼に付いて仕様がなくなったのよ。
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が、重荷を積んだ長い列車を大速力で曳くとすれば、何よりも此の汽車を走らせる道路が問題になる。レエルと云ふ強い鉄の棒が、地面の上に堅く敷かれて、何処までも何処までも平行して、どの汽車の車輪も外れないやうになつてゐなければならない。車輪の嵌まる浅い縁は、汽車をレエルから脱線させないやうになつてゐる。
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大きな煙突がそのところどころから、幾本も幾本も、黒い煙を吐いていた。そして瓦の海は、隣り部落を乗越え、何処までも何処までも拡って、青葉の中に消えていた。
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白状してはいけないのだ。私と校長先生とは二人きりでこの秘密を固く固く抱き合って、底も涯てしもない無間地獄の底へ、何処までも何処までも真逆様に落ちて行かなければならないのだ。
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煙草を吸ったり、田舎の駅で一房日本金五十円のモンキー・バナナを買って食ったりして景色を眺めていたが、そのうち頃合いを見て獣医と私とはまた機関車へ移動した。半透明の緑の碍子をつけた鉄道電話の電柱が、屈曲した鉄路に沿うて何処までも何処までもつづいている。線路の上においかぶさった芭蕉の葉や竹の小枝が、時々ピシリと機関車のガラス窓を打つ。
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慎作は、この事実に全く打ひしがれた自己をはっきり知った。そうだ、慎作は、常夜燈の様に消えなかった胸の火を、忽然吹き消されたまま、村を背に、同志を背に、殊に真暗な一家を背にして、何処までも何処までも走って行きたかった。
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晩春の生暖い風が、オドロオドロと、火照った頬に感ぜられる、蒸し暑い日の午後であった。用事があって通ったのか、散歩のみちすがらであったのか、それさえぼんやりとして思い出せぬけれど、私は、ある場末の、見る限り何処までも何処までも、真直に続いている、広い埃っぽい大通りを歩いていた。洗いざらした単衣物の様に白茶けた商家が、黙って軒を並べていた。
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彼女がその母にあまりよく似て、その美しさは母に似てそれよりも勝れていたから、王は彼女をアルモリカの荒い海と荒い磯とつづく北の領内の要害ラズモルに送りやった。この年つきグラッドロンのただ一つの歓びといっては、大きな黒馬モルヴァアクに乗って、さかまく海の浪のそばを、何処までも何処までも、何時間も乗り廻すことであった。アルモリカ人が恐れて海獣と呼んでいたその大きな馬に乗って行く時、グラッドロンはふだん聞くことの出来ない声をきくように思った、そして彼がむかし初めてゲエルの山の中で恐れ震えて聞いたマルグヴェンの長い叫び声もいくたびか聞えるように思った。
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強い牡犬と強い牝犬の恋を追って歩く弱い牡犬のように、首と尻尾を垂れて、二人の姿を追って、何処までも何処までも、ウロウロ従いて行く深沢深だったのです。その間に三室銀子は花々しく楽壇にデビューし、その美しい声と、可憐な表情でたった一ぺんに、人気の絶頂に押し上げられました。
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