万感
全て
名詞
274 の例文
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そのような女の恋愛はどこかミステリアスで、孤独で、少なからず秘密のにおいがする。女はたった一言の言葉に万感の想いを託すが、たいてい男には通じない。肝心なところは沈黙する。
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五月号を手にしたとき指が震えた。おなじ本を万感の思いで手にした、と指や目がちゃんと知っている。心を落ち着かせて目次を展いた。
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僕としても『頑張って下さい』と万感の思いで励ますしか道はなかった。そんなわけで、絶対に惜しみたくない別れを経験した僕の精神は積み木ぐらい安定を欠いて成長を遂げた。
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ことわざとは、 「言葉の業だ」 と考える。処世の知恵を伝える短いフレーズの中に、万感の思いがこめられている。そういう意味では、かのシェイクスピアこそ、言葉の業師ではなかろうか?
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ジェフの手を借りて、あたしたちは起きあがった。「無事だったのね」 万感の思いをこめて、あたしはジェフに声をかけた。「ちょっと、ごめんなさい」 ユリが割りこんできた。
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昨日の早朝、あかあかと燃え上がる門火の傍に立って、じっと玉子を見送る光秀の目に、光るものがあったのを、玉子は大事な宝のように胸にしまっている。あの、迫るような父のまなざしの中には、万感の思いがこめられていたのだ。母の子は涙を一滴も見せなかった。
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「又半年ハゴブサタスル」 彼はそう書いているが、果たして半年後に、再びペンをとることができるのだろうかと、わたしは危ぶんだ。「元気ニ」 の一言に、彼は万感の思いを託したのではないだろうか。
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ただ海の鳴る音が宵に聞いたよりももの凄く聞える。私は体の休まるとともに、万感胸に迫って、涙は意気地なく頬を湿らした。そういう中にも、私の胸を突いたのは今夜の旅籠代である。
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二人は万感が一気に込み上げてきたらしく手を取り合ったまま言葉を失ってしまった。人生に風化したような二人の老人が、長い空白の後再会して声もなく鬩ぎ合う感傷の中に立ちすくんでいる姿は、感動的であった。
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霧は相変らず深かったが、小林軍医大尉が阿武隈の士官室を出てデッキに上ってみると、雲の中からキスカ富士がぽっかり頭を出していた。小林軍医長は万感胸に迫る思いでしばらくそれを眺めていたという。艦隊がアッツ島の沖を通過する時には、「万歳、万歳」という英霊の声を聞いたという人が、五十一根の近藤敏直少尉、工兵部隊の関根欣幸陸軍上等兵ほか何人もいる。
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彼の体内では、感情の波が湧き立ち、ぶつかり合っているらしい。たった今、歴史を背負ったような万感の思いを味わっているのだろう。車両がトンネルに入った。
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はっきり言いきってしまうことが可能か。たとい言いきっても、なお万感の思いが残るのが信仰や恋愛の実相であろう。我々はここで表現の不自由を感ぜざるをえないのだ。
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じゃ私失礼するわ、 女が自動車をおりかけると、宇野何も云わず女の手をぎゅっと握った。女、五年間そんな事をされた覚ない故、万感交々で、涙が出そうになった。すると、いきなり宇野は、その白いきれいな女の手をかじり出した。
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共に軍人である。勝敗という軍人の負う宿命を噛みしめ、万感こみ上げていたのであろう。カステッラーノは当然、複雑な心境にあったはずである。
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せめて、何か、話を交したかった。しかし、万感胸にせまって、何を話していいのか、わからなかった。三平は、言葉が見つからぬままに、わななく手をのばした。
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即座に万感の思いが胸によみがえってきたのも無理はない。ああ、あれはあの、彼とマッケンジーとが、眠れる仲間たちを看とりながら、その酸素を分けあった宇宙服であろうか。
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何故か、泣きたくなるような気持ちにかられた。私は万感の思いをこめてうなずいて、てるの微笑に応えた。玄関ホールに入っても、てるは私のコートやショールを預かろうとしなかった。
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