一段
全て
名詞
副詞
3,515 の用例
(0.01 秒)
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最後の一段を終えて地面に足がつくと、おれはやっと大きく息をついた。
今までろくに呼吸をしていなかったような気がする。
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喬林知『今日からマ王 第15巻 「宝はマのつく土の中!」』より引用
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この時先生はやっとほんのすこうし笑って一段声を低くして云いました。
宮沢賢治『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』より引用
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たとい玩具にもしろ、何者かのいたずらにもしろ、二人ならんでいる女のうちで、多代子を目ざして蛇を投げ付けたのは、故意か偶然かと私はかんがえた。
二人のうちで、多代子の方が一段美しいためであったかとも考えられた。
その形のみえない暗いなかで、多代子が十分にそれを蛇と直覚したのは少しく変だとも言えないことはない。
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岡本綺堂『深見夫人の死』より引用
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私は此の日はすべてが快かつた。
さうしてもう帰らうと思つて見ると一段低い畑に婀娜な女が立つて居た。
此の女が沖を遠く見て居たのである。
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長塚節『隣室の客』より引用
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動く道路を降りて丘になっている一段高い公園みたいなところへあがった。
もちろん地中のことだから頭上には天井がある。
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海野十三『三十年後の世界』より引用
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葉子はそんな人間からは一段も二段も高い所にいるような気位を感じた。
自分の扮粧がその人たちのどれよりも立ちまさっている自信を十二分に持っていた。
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有島武郎『或る女』より引用
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歩兵にもう一段の推進力があったらというのは、この場合、無理である。
前日の攻撃で蘆塚部隊は立て直しを必要とするほどの状態に陥ったあげくの、引きつづいての攻撃であるし、須見部隊は既述の通り兵力を分派して、連隊とは名のみの程度の兵力しかなかったのである。
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五味川純平『ノモンハン(下)』より引用
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まだ遠くから、網の目のように細い雨を透して、板葺の、二本煙突の家が見えた。
それはほかの家よりも一段高く、てっきり百姓頭の住居と見うけられた。
私はそっちへ足を向けた。
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ツルゲーネフ/佐々木彰訳『猟人日記(上)』より引用
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というのは、私に不愉快なことを言う人がいなくなったということだ。
その一方私は、自分の一段低い身分から来る引け目を感じずにいられた。
この意識はフラミニアのやさしささえも消すことができなかったのだ。
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アンデルセン/神西清訳『即興詩人(下)』より引用
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英吉利では、外国人はどこまで往っても外国人である。
自分たちより一段も二段も下の動物と、万人が万人そう思っているらしい。
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谷譲次『踊る地平線』より引用
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ウンザリしながらあちこちをはかりなおす。
一段ごとに高さが違っている可能性もあるので全部の段をはかったりして。
ああ、嫌になっちゃうぜ。
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小野不由美『悪霊シリーズ 5 悪霊になりたくない!』より引用
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特殊なものは、一段的なものの上にたつことはできないのですからね。
ユゴー/斎藤正直訳『死刑囚最後の日』より引用
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その通い路をとおってまたお師匠さんの家に行き、墨のにおいをかぎ、そして階段をとんとんとあがって、呉さん、お茶を入れてきましたわ、と言うことができる。
その階段の一段ごとにはずんでいた自分の心をたしかめることができる。
そして呉さんは白い歯を見せて、おくさん、いつもすみません、と言うだろう。
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福永武彦『忘却の河』より引用
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第一段では、思考者としての人間ということに問題を限定して考えた。
ところが人間がものを考えるには、なにか考える材料が必要である。
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湯川秀樹『創造的人間』より引用
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歩いて來た方を振返つて見ると、競馬場の建物も農家の屋根も崖に遮られて見えず、道の行手は松林の梢にその眺望を限られてゐます。
土地は更に一段低くなつて、また同じやうに畠がつゞいてゐるのでせう。
然し畠の仕事は今が手すきの時節なのか、人は一人も通りません。
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永井荷風『畦道』より引用
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夜の八時になると、校舎は、あかあかと燈火に照らされ、緑の葉と花を組み合せた花輪や花綵で飾られた。
先生は、一段高くなった壇の上の大きな椅子に悠然と腰をおろしていた。
先生は、かなり上機嫌のようだった。
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トウェイン/大久保康雄訳『トム・ソーヤーの冒険』より引用
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自分で言って愉快だったのか、エリオが目を線にして笑う。
そうやって笑顔になるともう一段脱皮したように、魅力の質が変貌する。
直視できる人類は、地球上にいるのだろうか。
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入間人間『電波女と青春男 第05巻』より引用
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この木立をめぐって二本の腕のように、左右にのびる二本の通路が鉄格子の門から馬車を左右に段のある正面階段に導く。
階段の一段一段に、花をいっぱいにいけた陶器の花びんが置かれている。
広い敷地の中央に位置するこの家は、正門のほかに、ポンティウー通りに面した入口もある。
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アレクサンドル・デュマ/泉田武二訳『モンテ・クリスト伯(2)』より引用
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運転手が言ったので、架山と池野はくるまを降りた。
なるほど道に沿って、一段高くなったところにお堂らしい建物がある。
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井上靖『星と祭上』より引用
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けれども、この「地区の人々」という小説は同志小林が初めてボルシェヴィク作家らしい著実さ、人絹的艷のぬけた真の気宇の堂々さで主題の中に腰を据え書きはじめたことを印象させ、その点で感動を与える作品であった。
同志小林が作家としても一段深い発展に立っていることを感じさせた。
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宮本百合子『同志小林の業績の評価によせて』より引用