一口に言へ
17 の例文
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寧ろ、一種の満足の情が信吾の心を軽くしてゐる。一口に言へば、信吾は自分が何処までも勝利者であると感じたので。清子の挙動がそれを證明した。
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寧ろ、一種の滿足の情が信吾の心を輕くしてゐる。一口に言へば、信吾は自分が何處までも勝利者であると感じたので。清子の擧動がそれを證明した。
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それを見てからといふもの、僕がどんな懊悩の日夜を送つたかは、くどくどしく述べる気力がない。一口に言へば、僕は嫉妬と恋の鬼になつたのである。ある午後、僕は博士の不在を見すまして、猛然と彼女に迫つた。
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第一国語から離れすぎてゐると言ふ事が誇るべき事でないと同じに、それに近いと言ふ事が必しも詩語の強みになる訣でもない。一口に言へば、詩語が現代語や近代語と同じものでなければならぬと言ふことも、この理由から声高く主張する事は出来ない。
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しかしあの旅も私に取つては芭蕉に對する感銘を深くさせた。少年時代から私の胸に描いて居た芭蕉は、一口に言へば尊い『老年』であつた。私はつい近頃まで芭蕉といふ人のことを想像する度に、非常に年とつた人のやうに思つて居た。
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置形にも批の打ちどころがありました。一口に言へば衒気に満ちた作品でした。利休は何にも言はないで、静かにその肩衝を若狭盆の上に返さうとしました。
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階段を二三段いつぺんに駈け上り、駈けをりる感じである。作品をみても、さうした敏捷さ、激情性はよく表現されてゐる、一口に言へば奥村土牛は作家的にも人間的にも、非常に激しい人なのである。第二十四回日本美術院出品の「仔馬」はその抒情性に於いて隠されてゐる作者の人間的な優しさを露はしたものである、しかし奥村氏の人柄の優しさは、その人との対座に於いては感ずることができるが、作品の上ではそれとは反対の極限を画風の上で示す、土牛氏の芸術観は厳格であり、苛烈なものがそれである。
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猶更子供染みた手柄話などをすることはなかつた。つまり、一口に言へば、何一つ人の目を惹くやうなところの無い、或は、爲ない男だつた。私も、この高橋に對しては、平生餘り注意を拂つてゐなかつた。
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あれ以前から、私はたしかに結核患者に違ひはなかつた。しかしその頃はまだぴんぴんはね廻つたり、ボートを漕いだり、一口に言へば殆ど病人ではなかつたのである。病気は進行を停止してゐたし、医者も、もう大丈夫だから学校へ通ひ出すやうに、と言つてゐたくらゐだ。
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農民達はそんなことに満足してはゐないのですが、家らしい家を建てるまでの運びに行かないのです。一口に言へば、何時まで経つてもその日のことに追はれてゐて、そんな運びに至らないのです。小作料やら、納税やら、肥料代やら、さういつた生活費に追はれてゐて、何時まで経つても水呑百姓から脱することが出来ないのです。
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もつともそれは、左右のあごが張つて謂はゆるダボハゼであつたり、鼻孔が少しばかり大きすぎたりするところから生じる無邪気な調子をも、計算に入れての話である。一口に言へば、すでに四児の母でありながら、心身ともに女学生気質の抜けきらない人であつた。照子が児玉と結婚することになつたについては、面白い挿話がある。
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一口に言へば、彼は心を浮き立たせるやうな雑談が何よりも好きで、しまひにはただ口にのぼすことの出来る限り矢鱈にしやべり散らすといつた類ひの人物であつた。話が厳粛敬虔な問題に触れる時には、イワン・イワーノヸッチは一語々々の後で頷いては溜息をつくのだつた。
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何處が似てゐるかといふと、モオリアックの事をすこし詳しく書かなければならなくなりますが、まあ、一口に言へば、モオリアックといふ作家は、「とぐろを卷いてゐる蝮の群のやうな」神を見失つた人間どもの悲慘を描いて、逆説的に神のない世界の暗さを示さうとする作家であります。さういふモオリアックは、それ等の悲慘な作中人物どもの上に何處からともなく徐々に一條の神々しい、「冬の光線」に似た痛々しい光線を浴びせかけて行くのでありますが、その作品からカトリック的な要素を一切除いてしまつたら、そこには室生さんと大へん似通つてゐる一人の西洋の作家がゐるやうな氣がするのです。
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一層惡るいことには其内容の殆んど凡てが根柢から誤つて居る。一口に言へば日本人は其隣國であり殊に國民經濟生活の最大要素たるべき支那に關して全く沒常識である。彼等の沒常識の最も顯著なる實例三ヶ條を次に掲げよう。
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「妻覓ぎ」と言ふ古語は、一口に言へば求婚である。厳格に見れば、妻探しと言ふことになる。
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そして、すべての人は、今までの厳重な物忌みから、開放される。直会は、一口に言へば、精進落ちともいへる。だが、精進とは、仏教の考へから、魚を食はぬ事を斥していふが、本来は、禁欲生活・物忌み生活を言うた語である。
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