ヷイオリン
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名詞
8 の例文
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けれども、その笑が何も自分に關係のないのを知ると、また再び靜な自分にかへつて、あてもない瞑想を續けようと身じろぎを愼んだ。しかし次の瞬間には、全く思ひもかけず唐突に起つたヷイオリンの強い絃の音に、われにもなく心をとられて耳を欹てた。私は全くこんな田舍で、かうした樂器の音にめぐりあはうとは思ひもかけなかつた。
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「本妻にして呉れ、して呉れ」が、子供が母に何かをねだるのを見てゐるのと同じやうに、渠にはうるさかつた。それには、毎日かの女のあたまを何か一つのきまつたことに占領させて置く必要から、さきには、義雄が何年か以前に使つたヷイオリンを持つて來た。すると、かの女は獨りでどうやらかうやら調子に辿り付いて、田舍で歌を聞きおぼえたストライキ節などを云はせるやうになつた。
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私は全身の期待を以て耳を欹て、いつも音樂によつて心の奧に隱れてゐるかなしみを引き出され、ひそかに涙するその心持を早くも味ひながら、ヷイオリンの音のむせび出すのを待つた。それはやがて起つた。
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おれのうちを探してるのぢや、なア。ゆうべもおそくまで留守にして、歸つて來ると、直ぐ君のヷイオリンも三味線も皆たたき毀したさうぢや。
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ところが、はつと思ふ間に卑しげな流行歌が得々として彈き出された。しかもそれは、あの都大路を唄ひつゝさすらひ歩く墮落者の肩にあてられたヷイオリンほどの哀愁もなく、絃の音はその情操のない主人に驅使されることの不遇を悲しむ暇もなく、たゞ義理にうたつてゐた。私はがつかりしてしまつた。
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さうして日に何遍となくリボンを掛け易へる。近頃はヷイオリンの稽古に行く。帰つて来ると、鋸の目立ての様な声を出して御浚ひをする。
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愛子は何でも俺を本位として俺に賑やかな生活を与へるのに専念して居るらしいが、その為俺の趣味は混乱した。三味線とヷイオリンと、能、芝居、漢詩、俗謡、帝劇の女優、哥沢振りの踊。伊勢音頭の作りかへもさせられた。
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