クツワ虫
全て
名詞
18 の例文
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その木々の葉が夕立にでも洗われたあとであったか、一面に水を含み、そのしずくの一滴ごとに二階の燈火が映じていた。あたりはしんとして静かな闇の中に、どこかでくつわ虫が鳴きしきっていた。そういう光景がかなりはっきり記憶に残っているが、その前後の事がらは全く消えてしまっている。
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だいいち、この肌寒い早春の山風の中に轡虫が現われるはずがない。にもかかわらず、現実にその赤い轡虫はここにいる。早春どころではない。
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それにしても、いよいよ以てこれは世にあり得べきことではない。冬に轡虫などが生きているはずがない。いや、冬でなくっても、あんなに真っ赤な赤い轡虫が存在し得ようか。
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冬に轡虫などが生きているはずがない。いや、冬でなくっても、あんなに真っ赤な赤い轡虫が存在し得ようか。それが、みるみる鼠ほどになり、猫ほどにふくれあがって来た。
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ところへ一匹の轡虫が飛び込んで来ました。
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悪夢の中の轡虫の羽根の、痩せた男の顔は、三竿のうちのだれであったかはよくわからない。そしてまた赤倉才兵衛が、豁然として自ら称する「半睡浮遊剣」を発明したのも、右のような苦心の下敷きがあったればこそだ。
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夜なべか何かに煙草を刻んでいる家がある。その隣の方では轡虫が鳴き立てている。いずれもあまり風流でない、やかましい方の取合である。
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たしかにかたちは轡虫だが、羽根の真っ赤な轡虫など世にあるものではない。だいいち、肌寒い早春の山風の中に轡虫が現われるはずがない。
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それもその筈だ、彼等はみんな体格不良で、兵役を免除された輩だつたから。中将は轡虫のやうにサアベルをがちやがちや言はせた。
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いずれにしても句の世界に大した変りがあるわけではない。轡虫の声も最初のうちは四隣を悩ますだけの威力を具えているが、秋が深くなるにつれて、かすれたような声に変って来る。この轡虫もいささか声の衰えた場合、従って夜寒も身に入む頃と解していいかも知れない。
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微かに、微かに。それが轡虫本来のガチャガチャという鳴声ではない。
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夜はもう寒かった。轡虫の声もかれがれに、寒そうにコオロギが鳴いていた。秋は日に日に寒くなった。
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いずれもあまり風流でない、やかましい方の取合である。轡虫の声から思いついて、こういう取合を求めたとなると、いささか窮屈になって面白くないが、実際こういう光景があったのであろう。即きそうで即き過ぎぬところに、自然の妙は存するのである。
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霧のように細かな雨が降っている。何処かで轡虫の鳴くのが静かな闇に響く。夢から醒めたような心持である。
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女は襷がけで、裾をまくって、膝の少し下まである、鼠色になった褌を出している。その女が「いらっしゃい」と大声で云って、一寸こっちを見ただけで、轡虫の鳴くような声で、話をし続けているのである。二階は広くてきたない。
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轡虫が急に幾匹も鳴き出した。「いやねえ」と、駒子は彼の膝から立ち上った。
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三人は、ひたいを集めて凝議した。とにかく見ていないのだから「赤い轡虫」という意味はわからない、しかし「眠くなって」斬られたことだけはたしかだ。彼らほどの連中が大根のように斬られた傷を見ても、それは明らかだ。
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