カタナシ
30 の例文
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「そうか、それでは」 平三郎はしかたなしにその酒を注がして、口の縁へ持って往ったが厭でたまらない。それでも受けたものであるからしかたなしに眼をつむってぐっと飲んだ。「もういかん」 平三郎は盃を下においた。
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「必ず太陽を背にして飛べよ」ハリーはしかたなしに二人にそう言った。ハリーはハッフルパフのキャプテンと握手をすませ、マダム・フーチのホイッスルで地面を蹴り、空に舞い上がった。
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埠頭では左右に散開した二体のスキュラが大爆発を起こした。人類側に空中要塞と恐れられたスキュラも荒波機の前には形無しだった。「荒波司令、それぐらいで」 善行の声が聞こえた。
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一方劉万戸の方では、秀英を高位高官の者からもらいにくるので、そのつど婚姻をさせようとしたが、秀英が頑として応じない。しかたなしにそのままにしていたところで、文世高の名が聞えてきた。劉万戸は自分に明のなかったのをひそかに恥じていた。
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しかし主人は動くようすがないので、しかたなしにともかくも駒を並べた。さて並べ終ってみると、互いの飛車と角が同一の筋にある。
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彼は、その家の前まできてがっかりしました。しかたなしに、彼は、いま歩いてきた道をふたたび帰ろうとしました。そのとき、ふいに、彼のうしろで足音が聞こえました。
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松江は皆美館に泊る。部屋といい眺めといい料理といい、その善美なること言わんかたなし。しこうして風呂は温泉なのである。
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ついすると、神田の方へ往く電車の乗場にいるかも判らないと思って、そこへも往ったが、彼の女らしい者は見えなかった。私はその櫛を握ったまま、しかたなしに友人のいるカフェーへ引返した。「おい、なにをしているのだ、待ちかねたよ」 友人は左隅の卓に寄ってビールを飲んでいた。
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久しぶりで国へ帰って子供に会うのはうれしい。しかし夫の仕送りがとぎれて、しかたなしに親の里へ帰るのだから心配だ。夫は呉にいて長らく海軍の職工をしていたが戦争中は旅順の方に行っていた。
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あの時もおれは清助さんに止められて、あんな若い人を一緒に参籠に連れて行かれますかッて言われた。それでも勝重さんは行きたいと言うもんだから、しかたなしに連れて行った。
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しかし、それでもどうしてもそうした家がなかった。彼はしかたなしに諦めて、くたびれた足を引擦るようにして帰りかけた。東西になった街の東の方から青い上衣の小婢が来た。
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だから、わたしはしかたなしに話の通じないのを幸ひにして黙つてしまつた。このごろ殊に国へかへつてから、わたしにはわたし自身の好みといふものに或る偏屈を感じ出して、偏屈な人間はその偏屈であるためになほかつ偏屈にならなければならないことに、その意識を強めることが少し美しくない気がし出した。
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何か事情を知らぬかと、太后陛下にも目どおりしようと考えましたが、病に伏せたとの仰せ。しかたなしに、手持ちの騎士を用いて秘密裏に調査を開始したのです。
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家の者はそれを持って往こうとしたが、鉢が案にくっついて動かない。しかたなしに五六人で、力を合わして取ろうとしたがそれでも動かなかった。秋壑は奇怪な報らせを聞いて出てきて、ちょっと手をやると何のこともなしに取れてしまった。
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しかし、やらないわけにはいきませんから、しかたなしにやります。
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焦生と僕は途方に暮れてしまった。二人はしかたなしに何処かそのあたりで野宿にいい場処を見つけて寝ることにした。焦生は馬からおりて、野宿によい場処を見つけるつもりで、さきに立ってそろそろと歩きだした。
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私は背中にゐて お国さんはひどい と思つた。その晩私はしかたなしに学校へゆくことを承知した。あくる朝私は羽織袴で父といつしよに学校の門をはひつた。
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と、右の方から黒い大きな戸が音を立てて締って来た。彼はしかたなしに足を止めたが、その戸はみるみる左の方へ往ってしまった。彼はこの隙に入ろうとしたところで今度は左の方から黒い戸が音を立てて締って来た。
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折江もそれでしかたなしにふたたび写真のほうに目をやった。場面はあいかわらず信州の田舎で、都から追いかけて来た令嬢の恋人が、幽閉されている令嬢を救い出そうとして、盛んに活躍しているところで、別におもしろくも何ともなかった。
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ただ頼まれるとしかたなしにスタイル・ブックやモード雑誌を貸してただけ。
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異人はその女をほしいと言ったが、許されなかった。そんなら女の髪の毛を三本だけくれろと言うので、しかたなしに三本与えた。ところが、どうやらその女は異人の魔法にでもかかったかして、とうとう異国へ往ってしまったという。
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黙々と食事を続ける。シルフィードはしかたなしに、再び美味とはいえない料理と格闘し始めた。食事が済むと、シルフィードは早々に寝付いてしまった。
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鈴木くんは、いつも危ないことをぼくにやらせるのです。鈴木くんはケンカが強くて本気怖いので、ぼくはしかたなしに木の上に上りました。でも、木の上にカブトはいませんでした。
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それにしてもそういう場合は、女中がちゃんとそろえておいてくれるはずだのに、その日はどこにも見えなかった。彼はしかたなしに、素足のままで自分の部屋まで帰って来た。そこでふと見ると、部屋の前の廊下に、自分のスリッパがちゃんとそろっているではないか。
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宿をかしてくれそうな物を売る家の門口をかたっぱしから叩いてみたが、返事をするものがなかった。しかたなしに廡下をうろうろしていると、一軒の家の扉を左右に開けて一人の老人が出て来た。
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お種は厭な者に逢ったものだと思った。「お種さん、そんなに嫌うもんじゃないよ」 お種はしかたなしに足を止めた。「嫌やせんよ」 「嫌わなけりゃ、私の話を聞いてもらいたい」 背のずんぐりした角顔の壮佼の顔があった。
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しかし藤木の足は渚の方へと砂浜を下りて行った。僕もしかたなしに肩を並べながら、次第に失意の気持が強くなるのを禁じ得なかった。
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子供たちの唇はいちように紫色にかわる、その冷めたさを撥じきかえしてやろうという気力はなかった。ただ変な顰め面をして黙りこみ、しかたなしのように金網にへばりつく。すると網の目から、帰らねばならぬ自分の家が見える。
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