エストラード
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名詞
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むろん他にアリアバートがおり、ザーリッシュやイドリスらが藩王位とバルアミーとの間に立ちはだかっている。だが、生前のエストラード侯も第一に警戒していたのはジュスランであった。未だ三〇歳に達しないジュスランであるが、その言動は奇妙に奥深い知見の存在を感じさせるのである。
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エストラードが態度を変えたという噂が広がり、出現を信じる人がますます増えていった。
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エストラード侯は、その葬儀もきわめて簡素におこなわれ、喪主のバルアミー自身、ヴァルダナ宮廷の粛清に奔走して、葬儀の運営に専念できなかったのである。エストラード侯は死後、元帥号を授与されたが、これはどこまでも形式でしかなかった。藩王はアリアバート公に対バルガシュ全面戦争の計画立案を命じ、ひとまず会議を散会させた。
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恐れながら皇帝陛下に忠誠をつくしても、もはや詮なきこと。エストラード侯爵閣下におすがりするしか、われらに未来はないのです。
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そのことをすでにアジュマーンは察知したのであろうか。動揺する心を抑えて、エストラードは、異母弟たる藩王のもとに出頭した。息子のバルアミーが、ジュスラン公の高級副官という名目で「天の城」に人質となっている。
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というより、質問の形をとった、それは断定だった。この期におよんで、エストラードは一瞬ひるんだように見えたが、まったく一瞬のことであった。重々しく、軍務大臣はうなずいてみせた。
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ジュスランから話を聞いて、藩王アジュマーンも、完全には平静さを保ちえなかった。わずかだが首を振り、息を吐き出したのは、エストラード侯の死が階段からの墜死であったという事実に対してであったろう。不肖の弟を持ったザーリッシュの心情を共有したかに見えたが、すぐに彼は姿勢をたてなおした。
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休息をとるよう命令しておいて、すぐにジュスランは藩王アジュマーンに連絡をとった。軍務大臣エストラード侯は、まことにばかばかしい死にかたをしたものであった。だが、彼自身の不面目とはべつに、彼の死には大きな政治的意味がある。
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第二代藩王ヌーリィは、父ネヴィルを憤死させ、以後、タイタニアは、内なる敵に対して外なる敵と同様の苛烈さをしめしつづけてきた。にもかかわらず、一族内部の団結と統一は至上の価値を有するものとされ、そのことにエストラードも疑問をいだいたことはなかった。
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過日、藩王アジュマーンの異母兄であるエストラード・タイタニア侯爵の名が、彼らに利用されかけたように。エストラード侯はバルアミーの父親でもあったが、いずれにせよ反タイタニア派にしてみれば、タイタニア一族の分裂と対立を図るのは当然のことである。彼らはタイタニアの堅牢きわまる城壁をさぐって、脆弱な箇処を発見し、そこに破城鎚を撃ちこもうとする。
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イドリスなど、本来、軍務大臣の眼中にない青二才であった。エストラードに会うたび、かたくなって、年長者に対する礼をほどこしていたものだ。それが五家族の当主の一員となった瞬間から増長して、軍務大臣たる身をないがしろにするありさまである。
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異母弟たる藩王や、四公爵だけでなく、息子までも自分をないがしろにするか。そう思ったとき、エストラードの理性は、軌道をややはずれた。それにともない、口調も乱れて、ヒステリックな声が息子の面上にたたきつけられた。
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リディア姫の存在が通気孔となって、どれほど彼の精神的な健康さがたもたれているかという事実を。父エストラード侯の横死以来、彼の神経網は心痛で寸断されても不思議ではなかったのだ。リディア姫は「天の城」の内部をすみずみまで見たがったので、その日バルアミーは彼女を案内してセカンド・ポートに出かけた。
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彼らを迎えたエストラード・タイタニア侯爵に対して、説得と煽動がおこなわれた。あなたこそタイタニアの長として無地藩王の地位につくべきである、と、貴族たちの一団はエストラードに告げた。彼らは彼らなりに考えて策謀をめぐらし、タイタニア打倒の本心を隠して、つぎのように語ったものである。
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第一に、エストラード侯爵がどのような反応を示そうと、宮廷貴族どもが彼に叛逆をそそのかしたことが事実であれば、その罪科によって宮廷貴族どもを粛清することができる。第二に、仮にエストラード侯が宮廷貴族どもに叛逆を教唆された事実を沈黙していたとすれば、その責を追及することができる。第三に、エストラード侯が宮廷貴族どもに叛逆を教唆された事実を、藩王に通報してきたとすれば、彼に当面は叛意なしと判断することができよう。
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イドリスは近衛軍団司令官であり、軍の階級は上将である。エストラードは大将であり、軍務大臣であって、階級的序列はイドリスの上位にある。だが帝国の公的な階位は、タイタニア内部の序列に優先されるのである。
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第一に、エストラード侯爵がどのような反応を示そうと、宮廷貴族どもが彼に叛逆をそそのかしたことが事実であれば、その罪科によって宮廷貴族どもを粛清することができる。第二に、仮にエストラード侯が宮廷貴族どもに叛逆を教唆された事実を沈黙していたとすれば、その責を追及することができる。
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