むるところなき
全て
名詞
2 の例文
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併し彼の生活の中心を他人によつて侵害せられざる「天」に置けば、彼の名聲を傷つける者も、彼の愛を妨げるものも、根本的の意味に於いて「彼」の敵ではない筈であつた。さうして求むるところなき愛の眼を以つて見れば、彼等は唯、他人に不當の侵害を與へずにはゐられないやうな、小さい病める同胞の一人に過ぎない筈であつた。彼は此處に至つて、漸く「汝の敵を愛せよ」と云ふ言葉の意味を悟つたやうな氣がした。
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Qは固より、ノンセンスによつて彼を怒らせる世間と批評家との類と雖も、必ず認むべき價値があり、尊敬すべきの誠實があり、同情すべきの苦惱があるに違ひがない。故に自ら求むるところなき愛を以つてすれば、彼の敵も、彼の誹謗者も、凡て親愛すべき同胞に相違がないのである。自ら求める心を挾んで他に對する者は、求めるものを與へるか與へないかの一點をのみ廓大して、對象そのものの眞生命を遮蔽する。
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