その醜い
18 の例文
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目こそやさしくて正直そうだが、あまり醜い顔をしているので、いくら善良な老人だとはいえ、元は、まともに見る気がしなかった。それでも、元は老人の話に驚いて、すぐにその醜さなど忘れてしまった。なぜなら、ながい、まわりくどい、きれぎれな話から、元の心は、しだいに、はっきりしたものをつかみはじめていたからである。
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これまでとは比べ物にならぬ程小さい劇ではあったが、矮小ではなかったよ。自らの過去に蓋をする為、封印すべき過去と同じ手段を重ねるその醜さ。いや、堪能した。
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存在論的リズムの解釈はその様式と共にかかる一点に凝集する。その美しさはその様式の美しさであり、その醜さはその様式の醜さである。リズムならびに韻律はかかる文化形態においては、かかる様式のもとに構造をもつ。
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十輪坊は蜘蛛の顔を拡大したような容貌の持主であった。それが膝でにじりあがって来て、昼顔の前にその醜怪な顔をつき出した。昼顔はそれに唇を合わせた。
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しかしおかしなことには、それが醜いとはいいきれなかったのである。その醜さのうちには、なにか記念碑のように不滅のものが潜んでいた。そのとき彼の私にあたえた印象を、正確にはどのように表現してよいかわからない。
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彼らがどれほど善性を賛美しようと、悪性は生まれてくる。その醜さを、彼らは“誰か”の所為にする事で解決しようとしたのだ。悪性は自分たちの中から生まれるのではない。
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いずれにしろ想像力は新奇さにひかれる。こうして非常な醜男に、その醜さを考えずに夢中になることもある。。そして日がたつうちにその醜さが美になる。
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おまえは醜いな。その醜さが、おまえが自信を持ってるらしい可愛い顔にもにじみ出てるよ。
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この一時は、彼があの犯行以来味わった最も堪えがたいものだった。彼は死を目のあたりに、しかもその醜怪きわまる姿のままに見たのだ。魂の偉大さや高邁さなどのあらゆる幻想は、嵐の前の雲のように散らされてしまった。
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しかしすでに肉交に馴れたる男子が、肉交を善しと見、そを童貞なる青年に説くがごときは私は恥知らずとなすものである。すでに肉交を経験しながら、なおその醜さを感じられない人は無神経である。彼らはおそらくみずから欺いているのである。
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親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。さらにある雪の朝、姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、また素直な心根に見捨てられないものを感じて、彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。
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何の事情がかくはさせたか。そうしてその醜さからいかなる幸福を社会が得たか。道は二つよりない。
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たとえ醜悪な生であろうと、恵まれているのなら笑って受け入れなければ嘘になる。その矛盾、その醜さと一生涯向き合っていくのがまっとうな人間だ。人間は自分しか救う事はできない。
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日本男子鉄面皮なるも、その眼に映じて醜なるものは醜にして、美なるものは美なるべし。既に醜美の判断を得たり、然らば則ち何ぞその醜を去って美に就かざるや。本来醜美は自身の内に存するものにして、毫末も他に関係あるべからず。
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モリイがドアに手を伸ばしたので、ケイスもその醜さに気づいた。ドアそのものではない。
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すでにその醜怪な姿は、ぐったりした尼僧とともに裸馬の上にあった。怖ろしい怪力だ。
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彼女が今までの悔は、ともすれば言ひ譯の楯に隱れて、正面な非難を拒いでゐたのを知つた。彼女は今自分の假面を引剥ぎ、その醜さに驚かなければならなかつた。今こそ彼女は、亡き夫の靈と純潔な子供の前に、たとへ一時でもその魂を汚した悔の證のために、死ぬことが出來るやうにさへ思つた。
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