じめつき
全て
動詞
18 の例文
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これは明らかに殺人だ。それもこの長雨と同じかなり陰気なじめついた殺しに違いないと感じている。ベルの音が止まり、正面の管理官の方が、先に電話を取り上げたのを知り、乃木はのばしかけた手を、黒い電話機の上で止めて押えると、丸い大きな目で岩崎の方をじっと見つめた。
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そこはガード下の、一年中陽のさすことがない、じめついた店であった。しかし、米から肉、油、砂糖に至るまで、食料はおそろしく豊富にあって、平野は荒っぽいが栄養満点の食事を出す店のコック見習いということになった。
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時折の強風で葉についた雨滴が飛び散る。じめついた陽気だが、それでも森はほっとしてあたりの木々に目を細めた。
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薄暗いトンネルの中で、腐った葉のじめついた匂いが鼻をついた。径は狭いが、楽に二人が並んで歩けた。
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そよ吹く風は忍ぶように木末を伝ッた。照ると曇るとで、雨にじめつく林の中のようすが間断なく移り変ッた。
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会ったこともないが、何から何までよく知っているような気がしてならなかった。何かじめついた感情が湧きあがろうとしているようだった。甘くも美しくもなく、吐瀉物のように饐えた感じのものであった。
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男を上手に遊ばせ、楽しませる腕をきそい、そこに自分なりの誇りも持っていた。いつまでもじめついたりはしていなかった。廓の水に染まった女たちは、そこで男たちと対等にふるまうようになる。
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大勢にとりまかれているのが好きで、その点ではかなり派手好みの、いつもチヤホヤされていなければ気が済まない女のようでもあった。が、その分性格はからりとしていて、余程のことがない限りじめついたりはしないようである。「暑いのに悪かったわね」 昌代はそう言って吸いつくような瞳で淳二をみつめた。
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そこを母に手を引かれて通った記憶。横浜の乞食のいる橋はカラリと晴れ上がっていたが、こちらは陰でじめついている。それは自分たちの居住区の外れだった。
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地下の棺の中で。年古りた土の香に、じめついた空気と微生物の臭気が混じる広大な地下の広場。ここだけはコンピューターの制御を脱した真の過去が眠る空間であった。
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そうして前向きに鉱夫の仕事に向き合っている富治ではあったが、ひとつだけ、なかなか馴染めないことがあった。仕事場が、暗くじめついた、息苦しさを感じさせる地中だということである。先輩鉱夫たちは、落盤に気をつけてさえいれば、こんなに快適な仕事場は他にないと口々に言う。
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居酒屋の内部は鉱山町のそれに比べると、清潔で、こみ具合も少なく、かなり明るい感じがした。じめついたかび臭い空気のかわりに、木と戸外の匂いがした。三人は入口からさほど離れていないところに席を取り、礼儀正しい給仕にエールのジョッキを注文した。
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残った者たちにしても半数がマラリアと熱帯性潰瘍に冒されており、とても行軍を続けられる状態ではないと判断したのか、〝中隊長〟は洞窟に留まることを決めた。入口こそ小さいが、奥行きは三十メートル近くあり、じめついた空気を我慢すれば通気も悪くない。一時避難するには適当な場所とわかれば、田口たちにはなんの文句もなかった。
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場所からしてあんなじめついたとこじゃないか。この辺はどこでもみんな沼地なんだよ。
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やがて一週間ほどすると、崖は低くなり、道もいくらかなだらかになった。東の最後の丘陵地帯からかれらは広大な深い緑色をした、いかにもじめついていそうな平坦地を見おろしていた。「ついに着いちまったらしい」シルクはむっつりした口調でベルガラスに言った。
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藍色の空の端にわずかに金をはいたように残照があった。建物の裏手に回ってみると、石垣のすぐ近くまで下草の生い茂ったじめついた林が迫っている。給水タンクの脇に、一メートルほどの高さに薪が積み重ねられている。
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この当時の武士気質で、闇討であろうが上意討であろうが、主君からわざわざ名指しでえらばれたというのがうれしいのである。忠義などというような徳川時代的なじめついた道徳ではなく、すべてが個人の名誉が中心になっている。権蔵の武勇の名誉を美濃のお屋形様が見出してくれたというのがうれしいのだ。
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