ざめてをり
全て
名詞
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接吻したことすら、恋し合ふやうになつて、五年目の三十一の冬の夜にたゞ一度。彼女の顔は死のやうに蒼ざめてをり、私たちの間には、冬よりも冷めたいものが立ちはだかつてゐるやうで、私はたゞ苦しみの外なにもなかつた。たかゞ肉体ではないか、私は思つたが、又、肉体はどこにでもあるのだから、この肉体だけは別にして、といふ心の叫びをどうすることもできなかつた。
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焼野原になつた後で、偶然、駅で会つた。青年は食事が充分でないらしく、顔はひどく蒼ざめてをり、暁跡のたつた一軒のバラックの行列が寿司屋の行列であることが分ると、私に別れてその行列に加はりに去つた。青年の家は焼けたのである。
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