うしろへうしろへ
17 の例文
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モーターは調子よくうなっていた。左右にずっと並んでいる木立ちが、うしろへうしろへと走り去っていった。危機を脱して自由になったぼくは、いまや警察力を代表する実直なふたりに協力してもらって、取るに足りない私事を解決すれば、それでよかったのである。
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岐阜も同じのはずである。真っ白なみずみずしい煙が汽車の灯に照らされてうしろへうしろへと流れてゆく。時には雲の中にいるような錯覚に捕えられる。
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飲んでみろとすすめられ、真似して私がチュッとやるのを見てちびどもが面白がった。薄く光る線路が、相変らずの暗闇の中をうしろへうしろへ遠ざかって行く。シグナルの赤い灯が見えて、たちまち小さくなる。
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それから、ゆったり試験場へ現れたのである。試験場では、百人にあまる大学生たちが、すべてうしろへうしろへと尻込みしていた。前方の席に坐るならば、思うがままに答案を書けまいと懸念しているのだ。
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翌朝、マーゴのだるま船は順調な追風に乗って着実に南へ進んでいた。左側に見えるウルガ半島の荒涼とした海岸線が、すべるようにうしろへうしろへ流れていく。砕ける波からそそりたつ断崖絶壁、延々とつづく赤錆色のわびしい岩、ほんのときたま、申し訳程度の草木が目につくだけだ。
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それから、ゆつたり試驗場へ現れたのである。試驗場では、百人にあまる大學生たちが、すべてうしろへうしろへと尻込みしてゐた。前方の席に坐るならば、思ふがままに答案を書けまいと懸念してゐるのだ。
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運を天にまかせ、わが軍のすばらしい戦闘力を信頼すれば、ファースト・ボーンに圧勝して、無事デジャー・ソリスの身柄を引きわたさせることもできたかもしれない。もうもうたる火煙のため、わたしは通路をうしろへうしろへとさがらざるを得なくなり、暗闇の中に轟々と音をたてて渦巻く水のほうへ近づいていった。兵士たちといっしょに懐中電灯もなくなってしまったし、また、ここは下のほうの通路のように燐光性の岩石の光に照らされているわけでもなかった。
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往来う舟が、この狂気じみた汽艇の驀進に、びっくりして左右にけしとんだ。陸も、橋も舟も、みんなうしろへうしろへと飛んでいって、水が銀色の飛沫となって、汽艇のうえから降ってくる。それでも、船室へ潜りこもうとする者は一人もいない。
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庭の隅から隅までずらっとならんだ黒色人戦士の戦列が揺れ動いている。そのむこうから、たくましい馬にまたがった緑色人戦士の大部隊が、彼らをうしろへうしろへと追いつめているのだ。見まもっていると、ひときわ強い、阿修羅のような戦士がうしろのほうから前へ進みでながら、指揮下の恐ろしい軍隊にむかって、なにか激しい命令を発している。
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人類が今日まで夥しい努力と犠牲によって押しすすめて来た文化の蓄積を最も豊富、活溌に人間性の開花に資するようにうけとり活用して、そのような動的形態の中に脈々と燃える人間精神の不撓な前進の美を感得することは、何故これらの批評家にとってこれ程まで感情的に承認しにくいことなのであろう?これらの人々の内心がどんなカラクリで昏迷していればとて、文化上のガンジーさんの糸車にしがみついて、人類の進歩をうしろへうしろへと繰り戻して行きたいのであろうか?
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彼は大きな山脈をもっとよく見ようと起き上がった。山々はうしろへうしろへと積み重なって行くにしたがって、だんだんと黒ずみ、だんだんと野性的になり、やがて最後には峨々たる一つの峰となって西の空に高くそびえ立っていた。妙な、秘密の山々。
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いまや金色の月が、網の目のようにもつれあった雲を破って顔を出し、地上の風景を照らし出していた。ゾンガーは操縦装置を入念にあらためておいてから、小甲板に出て、低い手すりごしに、うしろへうしろへと退いてゆく地上を見下ろしてみた。強固な域壁をめぐらした都邑を囲む耕地が、すさまじい速さで背後に退き、ときどき、石を敷きつめた広い街道があらわれては消える。
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帰ったりはしないことよ、と云った瞬間の伸子の心に通じるものであった。同時に、パンシオン・ソモロフの古びた露台の手摺へふさって、すべての過去が自分の体ぐるみ、うしろへうしろへと遠のいてゆくようなせつな、絶壁にとりついてのこっている顔の前面だけは、どんなことがあってもしがみついているその場所からはがれないと感じた、あの異様な夏の夕暮の実感に通じるものでもあった。伸子は素子と自分との間に生れた新しいこころもちの距離を発見した。
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「その間一髪のおくれが、取り返しのつかぬものだった」 と、大介はお婆にいった。たちまちに、家康を、徳川の将兵が重なり合うようにしてかばい、そのうちの数名が大介の飛苦無に殪れるうち、家康は舟橋をうしろへうしろへと逃げ、ついに、飛苦無を撃ちつくした大介は、ふたたび長良川のながれへ飛び込み、必死で逃げるよりほかに手段はなくなっていたのである。
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両岸の家も、あかりも、うしろへうしろへふっとんで、へさきに立った俊助や樽井記者は、ランチのあげるしぶきをあびて、もう全身ずぶぬれである。しかし、青髪鬼のほうも死にものぐるい。
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風が時々アンモニア臭い霧みたいなものを吹きつけて来るのさえ我慢すれば、冷房のよくきかない室内よりずっと涼しくて気持がいい。いつか列車はあまり停らなくなり、したがってあまり停電しなくなり、幌のわきに赤いテール・ランプをぶら下げて、鈍く光る単線の線路をうしろへうしろへ繰り出しながら、「ケタタットット、ケタタットット」と走っていた。乾燥した大気が澄み切っているせいか、闇の曠野の上におびただしい数の星が見える。
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