うしなお
全て
動詞
18 の例文
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ホームズはあわててあたりを見まわしたが、あいにくとそのへんに辻馬車のあいたのが一台も見あたらないので、交通のはげしい往来を、そのまま跡を追ってかけだしていった。だが馬車はどこへ行ったことやら、もうまったく見うしなってしまった。「しまったな」ホームズは呼吸ぎれと口惜しさで青くなって、織るように往来する馬車をよけながら、いまいましそうに引きかえしてきた。
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骨のくだける音がひびき、一瞬の間、二人は動きをとめた。二人の男は彫像のように動きをうしなったまま、たがいの顔を見つめた。汗がオルガードの額にうかぶ。
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ところが、戦争が進むにつれ、軍そのものが、偽りで固めた人民むけ報道のためには、むしろ作家報道員を邪魔にしはじめたとともに、一般に、戦線視察にたいする作家たちの熱心がうすれてきた。どうして、作家たちが初期の期待をうしなってきたのであったろうか。戦争の本質そのものの間に、人間として、作家としての良心に、眼をひたとむけて答えるに耐える現実がないことが感得されてきたからであろうと思う。
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ひとに会わないようにしているのだと思って たずねることもしなかったが、 きみは何にこだわっていたのか。そのあいだに季節はめぐり、きみは 友人を二度うしなうことになった。記憶はもろいものだ。
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安がなぜ死なねばならなかったのか、私にはいまだに解りませんが、現在、私のまわりには、生きようとする意志をなくしてしまった少年が何人かおります。生きる意志をうしなってしまった人間ほど悲惨な状態のものはありません。なかには、二十歳にもならないのに人生の疲れを知っている者がいるのです。
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禅坊主はびっくりした。沓をうしなった相手がこう即座に挑戦に応じて来ようとは思わなかった。もう尻ごみはできない。
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いずれにせよ、不必要な誇張や、くどすぎるだじゃれや、きざな気どりなどが多少まじってはいるものの、人物と情況、物語性と人間性の関係を、つねに一貫して正しくとらえていることはまちがいない。これが今日でもなお多くの読者をうしなわないゆえんであろうと思う。
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口には破れ裂けた狩衣のはしをくわえている。その先には気をうしなっているらしい男の、小山のようなからだがあった。
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かの女が意識をうしなって、床に倒れているのを見つけたんじゃないかな?かの女が前に、きみがおじいさんを殺したと、告発にも匹敵するような非難をしていたことを、頭に思いうかべなかったというんですか?
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砂木くんは酒乱だった。酒のために分別をうしなって、わけもわからぬ状態で飛びかかってきた。わたしはそれをよけただけだ。
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それがあわただしく駈け出して来たので、大勢はまたびっくりしてその子細を訊きますと、ただいま御主人と奥座敷で話しているうちに、何か庭先でがさがさという音がきこえたので、なに心なく覗いてみると、二匹の大きい蟹が縁の下から這い出して、こっちへ向って鋏をあげた。それを一と目みると、御主人は気をうしなって倒れたというのです。それは大変だと騒ぎ出して、またもや医師を呼びにやる。
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その男はたぶん、刑期の終りまで無限にしゃべりつづけるだろう。彼は言葉をうしなったままで、無限に相手を必要として行くのである。失語とは、いわば仮死である。
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里村春美は婚家をうしない、子供をうしない、あるいは実家をさえも失うかも知れない。一切をうしなったあとに、始めて彼女は自由な生命を獲得したのだ。よくやった、と私は思った。
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アルスラーンの馬も、霧を不安がっている。霧のために行動の速度がにぶったら、騎兵隊はとりえをうしなうだろう。
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ここで話は、勿来関のちかくの山の中にうつります。炭やきのお爺さんが山の中で、気をうしなっている少年を見つけました。そういう深い山の中に、少年がやって来たのも不思議なら、また少年の服装や足を見ても、旅をしたらしいところが見えないのは不思議でありました。
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私は脚がもつれてよろけた。あわてて足場を見つけるのだが、すぐまたそれを見うしなってしまった。私は、私の人生が一目で望見できる堅固な、確乎たる足場を求めてさまよい歩いたが、しかし私の背後にあるのは、入りみだれた、おびただしい足跡だけであり、首をチョン切られたばかりの鶏が狼狽して発作的に駆けまわっているだけだった。
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死者をはずかしめ、意味もなくけがすだけのまことに悪辣なやりくちだ。彼は怒りのあまり、理性をうしなってしまいそうになっているのを感じた。彼はその怒りをふりはらった。
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