いよいよ最期
24 の例文
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そこで、さらに一年間を熟慮に捧げまして、とうとう五枚を僅か一枚につづめてしまいましたが、この一枚こそは、初めのものの五分の一だったわけです。そしてこの仕事を終えたときに、彼はいよいよ最期が迫ったことを感じました。そこで老学者は、己れの書籍と写本とが他人の所有に帰することを恐れまして、これを一つ残らず海に投じて、件の小さな紙片一枚しか取っておきませんでした。
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その朝、彼女はいつものように食事を運んで来て、そこへ置くと、彼の顔を見て涙ぐんだ。彼は、いよいよ最期の日が近づいたのだと思った。
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その時にはもう彼女は、両眼をふさがれ、何も見えず、悲鳴もあげられなくなっていた。いよいよ最期の時がきたことを知った。彼女は半死半生の状態だった。
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高い波長の金属音が艇内に響き渡り、気まずい沈黙を破った。征人は顔を上げ、少女と視線を絡ませて、いよいよ最期が近づいたことを確認しあった。二つ、三つと続く探信音波が、秒読みのように船体を打つ。
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足利軍は次々と新手を繰り出して、押し上って行った。頂上にある本陣ではいよいよ最期が近づいたことを知った。新田義貞の不在中、総大将として城を守っていた嫡子の新田義顕は、綱を利用して新天皇を岩壁から海岸におろし、非常用として隠して置いた小舟に乗せて避難させた。
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そこで執行人は、さっさと囚人をかたづけようと、ボエトンに近づいた。いよいよ最期が迫ったことを知ったボエトンは、声をふりしぼって群衆に向かって叫んだ。
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これは房事ではなく処刑だった。いよいよ最期の止めを刺すように信綱が腰を動かしかけたとき、三人の体の間から低い笑い声が湧いた。信綱はぎょっとしたようにその動きを止めた。
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父の恐怖ということについては僕も、いつぞや手紙に書いておきましたが、父からも何かお話ししたようですね?きのうの朝父は、かねて保存してあったアフガン戦争従軍時代の古い軍服を出して着ていましたが、それを見て僕はいよいよ最期がきたことを知りました。
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チラチラと動きまわる光が眼にはいり、興奮した声が耳にはいると、一瞬、その心をおおった霧がはれ、最後の恐怖の波が潮のように押しよせるとともに、その声が敵の声であり、彼らが仲間を倒してしまったことを知った。今や彼は、自分がただ一人取り残されてしまったこと、自分が失敗したこと、いよいよ最期だということ、そして、今までの苦労がすべてむだであったということを知ったのである。その時、再び霧が彼をつつみ、虚脱感だけが後に残った。
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私がこのお屋敷にご奉公に上ってから六十年間、あの足音は毎晩のように聞いていたけれども、昨夜みたいにこわかったことなかったもの。でも、いよいよ最期が近づいたのだよ。
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奇跡でもないかぎり、激昂した黒色人が襲いかかる前に、デッキにのぼることは不可能だ。いよいよ最期の時が来た。わたしは観念した。
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が、わたしが突如としてその場へ飛び込んだので、巨竜は虚を突かれたらしく、サッと方向を変えて、ふたたびわれわれの頭上へと舞い上がった。わたしがかたわらに飛び降りたときの物音で、女はわたしを巨竜だと思い込み、いよいよ最期の時がきたと覚悟したにちがいない。ところが、凶暴な牙が襲いかかって来る気配がないので、びっくりして目を上げた。
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おもい引戸があいて、市五郎が納戸の中へ入ってきた。「おえん、いよいよ最期がきたぞ」 いいながら市五郎は彼女の様子をうかがった。
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足が萎え、ずるずるとギンナルはへたりこんだ。いよいよ最期だと思った。ふと左手首の腕環に視線を落とした。
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綿のように疲れていた上に心地よい満腹感が重なったオー=アアは、夢も見ずにぐっすり眠っていた。ディヴィッドは、巨大な波が船尾の上にそそり立つのを見て、アモズ号もいよいよ最期だと観念した。ついで、大波はすさまじい勢いで襲いかかり、必死にしがみついている支えから彼らを引き離して甲板に叩きつけた。
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江南を目指して一心に馬を走らせるものの、もとより逃げきれると考えていたわけではない。ほどなく劉邦が送った追跡部隊に包囲され、いよいよ最期の時が訪れたことを知った項羽は漢兵の群れに身を投じ、自らの武を示せるだけ示した後に自刃した。我が身の没落はあくまで天の為すところであって決して武勇の弱さによるものではない。
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夜が更けてからでは気味が悪いので宵の内にやろうと、艶二郎が贔屓にした茶屋・船宿・幇間・芸者が太々講の人々を見送るように羽織・袴を着て大川橋まで送り多田の薬師で皆と別れた。艶二郎は日頃の願いが叶ったと喜び勇んで道行をして、ここが最期にはいい場所と脇差を抜きいよいよ最期のときと南無阿弥陀仏を唱えた。それを合図に稲むらのかげより黒装束の泥棒が二人あらわれ艶二郎と浮名を身ぐるみ剥いて真っ裸にした。
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